地震発生5分後に津波到達するも「死者はゼロ」 “奇跡じゃなかった”事前の準備 自主的に作った名簿が1人の命を救う
すみやかな避難や、安否確認に役立つ「個別避難計画」の策定は3年前の法改正で市町村の努力義務になっています。しかし… (紀宝町・防災対策室 堀勝之室長) 「隣近所でコミュニティがある中で、発災後の支援は不可能だし、行政側としてもまずは“自分の命”ということで、犠牲者をできるだけ少なくしていく」 「災害弱者」が確実に逃げるために、法律上は理想的な計画とも言えます。しかし、作業量が膨大になるうえ、個人情報も絡む作業は自治体の大きな負担になっていて、三重県内で策定できた自治体は1つもありません。 一方、能登半島地震では住民の「事前の準備」で救われた命が。 能登半島の先端に位置する珠洲市狼煙地区。約50世帯100人が暮らすこの町には地震から5分たらずで津波が来たと言いますが、高齢化率が約6割と高く、100歳以上が3人いるにも関わらず津波の死者は「ゼロ」だったのです。 地震のあと、住民は毎年行ってきた訓練の通り高台に避難し、すぐに80代の女性1人がいないことに気づくことができました。それには理由が… (珠洲市・狼煙地区 糸屋敏夫区長) 「これが自主的に使っている名簿です。(名簿で確認したら)1名いないことが分かって、あそこ家が潰れとる、生き埋めになっっているのではないかとなった」 電話で安否確認をしたところ、女性が倒壊した住宅に“生き埋め”になっていることが分かったのです。 ■勉強会を開くも参加者は1割 「死者ゼロ」を奇跡にしないために (珠洲市・狼煙地区 糸屋敏夫区長) 「『逃げられない、出られない』と言うので4、5人で救助に行ってもらった。漏れずに安否確認ができた」 5年前に自主的に作られたこの名簿は、住民ほぼ全員の生年月日や電話番号などの情報のほか「個別避難計画」ほど具体的ではないものの、支援が必要な人が誰なのかも、記載していました。繰り返してきた訓練と、地域のつながりで作った「名簿」がもたらした津波死者ゼロは、決して「奇跡」ではなかったのです。
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