再び大空を舞う日まで 久光スプリングスの32歳長岡望悠が今、最も大切にする「生きざま」【記者コラム】
記者コラム
翼を大きく広げた鳥が大空を高く舞う―。躍動感に満ちた長岡望悠(32)=バレーボールVリーグ女子1部(V1)の久光スプリングス=のジャンプサーブを見るたびに心を揺さぶられる。指先から足先まで神経が研ぎ澄まされているようで、力強さと美しさが伝わってくる。 ■【必見写真】ジャンプサーブを華麗に放つ久光スプリングスの長岡望悠 今季2023~24年シーズンはレギュラーラウンド22試合とプレーオフの2試合の計24試合でコートに立った。セッターとの2枚替えがメインだった昨季から一転、スタメンでけん引。度重なる膝の大けがもあり、フル回転したのは16~17年シーズン以来だった。 「体に関しては『しっかりできるんだな』というのが大きいです。でも…」。手応えを示しながらも納得はできていないことが、続く言葉で分かった。「試合でもっと高いパフォーマンスを発揮するためにどうするか。その部分で改善できるところが多かったです。サーブも、もう少し戦力にならないといけなかった」 プレーオフでは1勝もできずに終戦した。最後はデンソーエアリービーズにストレート負け。長岡は第3セットの途中からベンチへ下がった。悔しくないはずがない。胸中がどうしても知りたくて、今最も大切にしているという言葉「生きざま」について質問した。
「もっと」というモチベーションがなくなったら…
「昨夏のことですね。外部のトレーナーで、女子の日本代表や久光にも携わっている油谷浩之さんから教わりました。私には、本当に響いた言葉でした。(競技人生の)後半に入って、これからどうするか、という時期でもあったので。油谷さんに『生きざま』と言われて、自分はどうしたいんだろうと…」 導き出した結論は「中途半端だけは駄目」だった。「ここまで(現役を)続けているのも、自分の中での『もっと』なんです。どうやったらもっとできるのか。もっとできたらいいな…とか」。そんな感情を繰り返しながら、日々バレーボールと向き合ってきた。「『もっと』というモチベーションがなくなったら…もう…ですが」。長岡は言いかけた語尾をのみ込んだ。 2年前の夏、初めて長岡を取材した。故障や年齢とも闘いながら現役を続ける理由を尋ねると、真っすぐな視線で答えてくれた。「チャレンジしきって終わりたい。そこが一番です。今のままだと、周囲に対しても『不完全燃焼』だなと。すっきり清算して終わりたいんです。私…シンプルじゃないと生きられない人間なので」。ほほ笑みながらこっくりと頭を下げた。