再び大空を舞う日まで 久光スプリングスの32歳長岡望悠が今、最も大切にする「生きざま」【記者コラム】
Vカップでも「チームのために」
膝の手術から復活し、昨年は日本代表として約5年ぶりに国際大会のコートにも立ちながら、今年はパリ五輪を目指す代表の登録メンバーから外れた。オリンピックの舞台でプレーする姿を再び見ることはかなわないかもしれない。それでも…と思う。今の長岡は、バレーボールをとことんまで極めようとしているのではないだろうか。「オリンピック」や「日本代表」とは別の境地で理想の姿を追い求め、シンプルに生きていく―。だからこそ「もっとうまくなるために、もっとプレーヤーとして成長するために」なのだ。 プレーオフから間もなく開催されたVカップはチーム方針もあり、若手主体で臨んだ。セッターの栄絵里香(33)とともにサポートに回った長岡はコートに立たなくても、次代の久光を担う吉武美佳(20)や北窓絢音(19)らに寄り添い、助言を送り続けた。得点シーンではうれしそうに手をたたき、もり立てた。試合の出場有無にかかわらず「チームのために」との姿勢は変わらない。その点でもシンプルだ。 春風のようなふんわりとした笑みとゆったりとした語り口の中に「一度決めたら、やり抜く」との信念がにじむ。「望みを高く、悠(はるか)大きく」と願った父から「望悠(みゆ)」と名付けられた。名は体を表す、というよりも体を表すための名というべきだろうか。小学2年から始まった競技人生。力強く、そして美しく…懸命にコートで舞い続ける長岡望悠の「生きざま」は、私をひきつけてやまない。 (西口憲一)
西日本新聞社