「障害者5000人が解雇、退職」で明るみに。ビジネス化が進む“障害者の就労支援”の実態
情報がオープンにされていないという問題
しかし山﨑さんが続けたのは憤慨ではなく意外な言葉だ。 「転職エージェントの“仕事”によって、最終的に就職できてWin-Winとなる障害者もいるでしょう。あるいは株式会社化して一部上場して、短期決戦で障害者を企業に売り込んでいる就労移行支援事業所も、ニーズは確かにあると思うんです。問題は『秘密裡に動いている、情報をフルオープンにしてない』ということなんですよ」 問題は「当事者に情報がいかない」ことだという。 「区市町村は公平でないといけないので、事業所の電話帳みたいな冊子を渡して『ここから選んで下さい』と言う。それで当事者もわからないから、ネットで検索する。そうするとSEOなどで広告に大金をかけている企業がまずヒットするので、そういったビジネス化している事業所にみんな集まりやすいんです。だけどそういった事業所と、自分のニーズが必ずしもマッチしているとは限らないですよね」
自分の力で人生を切り開いてほしい
山﨑さんが所長を務める就労移行支援事業所T&Eはどのような施設なのだろうか。 「うちは広告にお金をかけてなくて(笑)、口コミで来てくれた利用者ばかりですね。精神科医や心理職、学校の先生が紹介してくれて。利用者は卒業後に自分の力で人生を切り開いていくことのできる“胆力”を身に着けられるよう、長期的な視点で支援に当たっています。利用者の発達課題の取りこぼしの解決などですね」 そう言って、エリクソンの発達課題を詳細に説明したサイトURLを筆者の携帯に送ってくれた。 エリクソンの発達課題にせよ、障害者問題にせよ、この情報が氾濫している社会において、一般に多くの人々は自覚なく表層的・短絡的に物事を捉えようとするだろう。情報の表面部分をすべるようにして過ごす生き方だ。 だが「僕は独身で、今のところ土日祝はないですね(笑)。切れ目なく働いてます」と快活に語ってみせる山﨑さんは、問題の“根底”の一端に迫っている可能性があることを感じた。 <取材・文/延岡佑里子> 【延岡佑里子】 障害者雇用でIT企業に勤務しながらの兼業ライター、小説家。ビジネス実務法務検定2級、行政書士試験合格済み。資格マニアなのでいろいろ所持している。バキバキのASD(アスペルガー症候群)だが、パラレルキャリアライフを楽しんでいる。Xアカウント名:@writer_nobuoka
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