「ココリコ」田中直樹、苦労時代を支えてくれた2人の先輩
加藤さんとは、方正さんみたいに会ってすぐに親しくさせてもらったわけではないんです。これは僕の一方的なイメージだったんですけど、なんとなく怖い印象があって。ただ、加藤さんと僕は誕生日が同じなんです。4月26日で。そこをきっかけに、出会って1年以上経ってから、お話をさせてもらうようになりました。 加藤さんがアルバイトをされていた「VIV(ヴィヴ)」という飲み屋さんに連れて行ってもらったり、加藤さんにもよくご飯を食べさせてもらいました。ちょうどその頃、吉本の劇場「銀座7丁目劇場」ができるんですけど、当時はまだ僕ら「ココリコボンバーズ」というコンビ名だったんです。そうしたら、加藤さんが劇場の楽屋でおっしゃいまして。「『ココリコボンバーズ』って長いし、お前ら『ボンバーズ』な感じもしないから、『ボンバーズ』ちぎっちゃえよ」と。 普通は「『ボンバーズ』取っちゃえよ」と言うところだと思うんですけど、この「ちぎっちゃえよ」という感覚が何とも加藤さんらしいなと。そういうセンスというか、表現というか、その空気を近くで学ばせてもらいました。 実際、加藤さんはいろいろな芸人にきっかけを与えてらっしゃって(ロンドンブーツ1号2号の田村)亮を金髪にさせたのも加藤さんですし、「おぎやはぎ」が2人そろってメガネをかけるようになったのも加藤さんのアドバイスですし。そういう言葉の力をお持ちの方なんだと思います。ただ、亮には「顔にファイヤー柄の入れ墨を入れろ」とも言ってましたんで、全部が全部、みんな守ってるわけではないんですけどね(笑)。
また、ちょうどその頃、実は、僕らは一つの区切りを迎えつつある時期でもあったんです。ライブにはちょこちょこ出してもらうようになったけれども、なかなか仕事が広がらない。そうなると、気持ちがどうしても腐ってくる。そして、デビューから3年というところだったんですけど、そもそも相方と「3年経っても、レギュラーを持ててなかったら、もう区切りをつけて辞めよう」と言ってコンビを始めていたんです。 リミットは迫ってくるけど、依然、レギュラーはない。そんな中、加藤さんは「とぶくすり」(フジテレビ系)で人気が出て、どんどんお仕事を増やしていかれていた時期だった。そこで加藤さんが言ってくださったんです。「オレらでも、こうなり始めたんだから、お前も絶対に大丈夫だから」と。 まさに、どんどん仕事が増えている直属の先輩の言葉。もちろんありがたいし、近い方だからこそ染み入るし、その言葉で「今一度、頑張ろう」となったんです。現に、その直後に静岡でレギュラーを持たせてもらうようになって「ココリコ」が続くことになりました。 なかなか恩返しなんてできないですけど、加藤さんには毎年、誕生日には「おめでとうございます」という電話をしています。「誕生日おめでとうございます」と言うと、加藤さんが「お前もな」と返す。このオッサン同士の気持ち悪いやりとりを照れることなく、死ぬまでやり続けようとは思っています(笑)。 ■田中直樹(たなか・なおき) 1971年4月26日生まれ。大阪府豊中市出身。専門学校在学中に、小学校からの付き合いの遠藤章造に誘われ、東京の吉本興業のオーディションに合格し、コンビ結成。日本テレビ系「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」、テレビ朝日系「いきなり!黄金伝説。」、NHK「LIFE!~人生に捧げるコント~」などに出演中。俳優として、映画「みんなのいえ」、日本テレビ系連続ドラマ「慰謝料弁護士~あなたの涙、お金に変えましょう~」などにも主演している。また、主演映画「だCOLOR? THE脱獄サバイバル」が公開中。共演は佐藤二朗、渡辺いっけいら。フジテレビ系(オトナの土ドラ)「朝が来る」(土曜・後11時40分)にも出演中。 ■中西正男(なかにし・まさお) 1974年大阪府枚方市生まれ。立命館大学卒業後、デイリースポーツ社に入社。大阪報道部で芸能担当記者となり、演芸、宝塚歌劇団などを取材。2012年9月に同社を退社後、株式会社KOZOクリエイターズに所属し、芸能ジャーナリストに転身。現在、関西の人気番組「おはよう朝日です」に出演中。