火星の「月」を探査するMMX どんな計画? 史上初の「火星圏」サンプルリターンに挑む
火星の衛星を探査してやるぞ――。そんな意味をもつ探査機「MMX」が2026年度に打ち上げられる予定です。小惑星探査機「はやぶさ2」の後継機とも呼ばれますが、いったいどんなことをする計画なのでしょうか。先月、MMXの旅を紹介するプラネタリウム向けの番組が完成し、試写会が開かれました。(朝日新聞デジタル企画報道部・東山正宜) 【画像】火星に接近するMMXの探査機 旅の計画、プラネタリウム番組で紹介
火星にある二つの月
MMXは「Martian Moons eXploration」の略。火星の衛星(地球でいうところの「月」)を探査してやるぞ、という意味です。 火星には、フォボスとダイモスという二つの月があり、MMXはこのうち、火星に近い方のフォボスを目指します。 フォボスは直径約22kmで、火星からの距離は6000kmくらいの衛星です。地球の月が直径3400km、距離38万kmほどですから、かなり小さくて近いですね。 重力も地球の1千分の1ほどしかないので、無重力に近い小惑星に着陸した「はやぶさ」や「はやぶさ2」のノウハウが生かせると期待されています。 とはいえ、探査は一筋縄ではいきそうにありません。 フォボスは旧ソ連の探査機フォボス1号、2号が1980年代に探査や着陸を試みたものの、通信が途絶して失敗。2011年にロシアが探査機フォボス・グルントでリベンジに挑みましたが、打ち上げがうまくいかずに墜落しました。いまだに着陸を成功させた国はありません。 そもそも、別の惑星を目指すこと自体がかなりの困難です。 地球の重力を振り切るために勢いを付けて飛び出さないといけませんが、その惑星に近づいたらフルブレーキをして減速しないといけません。 日本の金星探査機「あかつき」はこのフル減速中に「ブレーキが故障」して止まりきれず、到着が5年遅れました。逆噴射をするメインエンジンが壊れてしまったとみられています。 火星を目指した探査機「のぞみ」も、1998年に打ち上げられたあとに通信が途絶しています。 プラネタリウム向けの番組「MMX 火星衛星探査計画」は、こうした挑戦の難しさや科学的な意義をCGで解説した映像番組です。 上映時間はロング版が40分でショート版が28分。近く全国のプラネタリウムで放映される見通しです。