「与党過半数割れ」でハッキリと見えた!日本の政治家の「政策論」が深まらない理由…日本政治に巣食う「忖度」と「不勉強」のヤバすぎる病魔の正体
首相に透ける「権威主義」
第3に、「問題を指摘しても議員が何も考えてくれない」という問題だが、これは実際にあるようだ。石破氏のかつての派閥、水月会(すいげつかい、2021年12月に議員グループに改組)は、人材の宝庫と言われ、一本釣りで大臣を務めた議員も多い。 これらの人々は、石破氏が持論としていてすぐひっこめてしまった政策の問題点を指摘していなかったのだろうか。指摘されていたとしたら、石破氏はなんと答えていたのだろうか。 石破派の若手議員から、「石破氏は、(現在の金融政策は異常で)金融緩和は出口に行かなければならないと言っているが、それでは石破自民党総裁が実現すると株が下がる。出口については、言わないようにとお願いしている。」と聞いたことがある。つまり、石破氏は、株が下がるような発言を多々してきて、総裁選でもそれを続けていた。ところが、総裁になると実際に下がったので、ほかの有力議員の進言もあって、急に取りやめたのだろう。 石破グループの若手議員が親分に進言しても聞いてくれなかったのに、有力者に同じことを言われたら、すぐ言うことを聞いたという訳だ。私が若手議員ならかなりがっかりする。 石破氏は、仲間の議員の発言をあまり聞かないと言われているが、有力議員や有力官庁やマスコミの言うことは聞くのかもしれない。 石破氏は、リベラルと言われる。リベラルには寛大という意味もあるが、知においては寛大ではなく有力議員や有力省庁の知を重視する権威主義があるのかもしれない。
日本型政治の「忖度」という歪み
第4の「専門家や役人が本当のことを言わない」とは、有力議員を不愉快にしたくないということだ。 石破氏は、地方創生が成長の起爆剤になり、地方創生の主力は農業や観光業だと述べた。しかし、日本のGDPに占める農業の比率は1%でしかない。これが倍に増えてもGDPは1%しか増えない。もちろん、日本の実質GDPは毎年1%しか成長していないのだから、これも大事な政策だが、起爆剤とは大げさだろう。 私は、石破氏を不愉快にしてもかまわないが、そうではない人は多いのだろう。本当のことを聞くためには、人間関係のない人からも意見を聞くことが必要だ。 第5の、「尖った意見が十分に議論されない」とは、まさに石破首相の持論の東アジア版のNATOとか日米地位協定の見直しのことである。あるいは、雇用流動化など国民を二分する政策が十分に議論されていないということだ。 これを売り込む学者や評論家としては、政治家が賛同してくれれば嬉しいだろう。当然、良いことばかりを話すのだから、仲間の議員や役人が歯止めにならないといけない。 しかし、ここから専門家の意見を十分にグループで政策に落とし込まなければならないはずだが、そこに親分を不快にはしたくないという忖度が働くのであれば、目も当てられない。実現の見込みのない政策を親分が提唱して攻撃されて、すぐに意見を変えたらみっともない。親分にとって、考えることを促してくれる部下や仲間は貴重なはずだが、それが機能しているようには見えないのは問題だ。 それを親分が貴重と思わないのは、政治家が攻撃されることに慣れていないからかもしれない。