「弱者の兵法」で国立大の和歌山大が神宮初出場初勝利!
確かに国立大のハンディはある。 練習は週に2日。外野の一部はアメフトと共有で全体ノックはできない。早朝練習を取り入れているが、限られた練習の中で、真鍋は「ボール回しを大切にしています」と言う。環境を逆手にとって集中力を養う。 大原監督が、東亜大の練習を山口県まで見にいくと打撃ゲージしかない小さなグラウンドだったという。 「環境じゃない、中身なんだとわかりました」。土日は、できる限り試合を組んだ。春には、沖縄でキャンプを張る。だが、国立ゆえに運営資金は潤沢にあるわけではなく、それらは自己負担。貴志ら選手は、家庭教師や焼肉屋など様々なアルバイトで、遠征資金を稼いでいる 特別推薦で選手は取れるが2、3人程度。あとは受験をクリアしなければならない。大原監督の本業は、学習塾などを運営する会社の管理職で、そのネットワークを利用して、「これは」という選手に声をかけ、受験指導までして選手を集めた。今ではチームに甲子園経験者が9人揃うまでになった。 過去に国立大としては、北海道大と京都教育大が2勝しているが、ベスト4進出は61年ぶりとなる。準決勝進出をかけた今日8日の相手は、上武大である。スピードスターの島田海吏外野手らプロ予備軍が揃う優勝候補だ。「弱者の兵法」がはまりやすい絶好の相手に思えるが、大原監督は「でもね、上武さんは、次の塁を常に狙うし、強豪にありがちな隙が少なくまとまりがあるワンランク上のチームです」と警戒する。 しかし、キャプテンの真鍋は、淀みのない言葉を発した。 「いろんな人に支えられてここにきました。誰かのために戦おう。僕は今日、そう呼びかけました。夢は日本一です。まずこの1勝で、そこを狙える土俵に立ったんです」 和歌山大旋風を巻き起こす決意である。