松坂を巻き込みメッツでも人種差別事件
招待選手としてメッツのキャンプに参加、5番目の先発争いに順調に滑り出している松坂大輔の預かり知らないところで、思わぬトラブルが起きていた。NYタイムズ紙や、NYニューズデーなどの地元紙の電子版は、この日、一斉に「メッツの投手コーチが、中傷発言を謝罪」の見出しで詳細を報じた。 事の起こりは、米国時間の9日、メッツのダン・ワーザン投手コーチが、松坂の通訳である日系アメリカ人のジェフ・カトラー氏を「チャイナマン」と呼んだことに始まった。その表現が適切ではなかったことに気がついた同投手コーチは、翌10日、クラブハウスで、記者と雑談していたカトラー通訳に歩み寄り、「昨日は、君の事をチャイナマンと呼んですまなかった。中傷するつもりはなかった。ジョークのつもりだったんだ」と告げ、同通訳も「オッケー」と謝罪を受け入れた。 その一部始終を聞いていたのが、さっきまでカトラー通訳と雑談していたウォールストリートジャーナル紙の記者。同記者が、中国系アメリカ人だったことから、話が複雑になった。同記者は、球団のホロウィッツ広報部長を通じて、同コーチの発言についての説明を求めたため、一旦は、12日早朝に話し合いの場を持つことになっていたが、結局、実現しなかった。 同記者は、自身の記事で、「驚いた。元々、19世紀に白人の米国人が中国からの移民に対して使っていた差別的な言葉を、最後に聞いたのはいつの事か覚えていない。小学校の運動場ならいざ知らず、NFLやMLBのクラブハウスでそんな言葉を聞いたことはない。首から報道のパスをぶら下げた記者が、クラブハウスへの立ち入りが許可されていた時間なのに」と、激しく同コーチの不適切発言を批判した。 慌てた球団は、翌日12日に、アルダーソンGMと、ワーザン投手コーチの謝罪声明を出した。「球団として、我々のスタッフから発せされた配慮を欠く発言について謝罪します。発言は不適切で、球団として大変申し訳ない」とGMが言えば、「昨日の発言について謝罪します。軽卒で、いかなる状況でも間違った不適切な表現でした。申し訳ありません」と同コーチ。松坂自身はこの件に関して発言はしていないが、この日、地元紙が一斉に、記事として取り上げる事態となった。