ギリシャで地下鉄工事中に古代遺跡発掘 論争の末、遺跡と共存する地下鉄が開通
ギリシャ第2の都市テッサロニキで11月30日、待望の地下鉄が開通した。この地下鉄の駅を利用する通勤客は、先端技術を活用した改札や発車案内のデジタル表示板をはるかにしのぐものを目にすることだろう。駅の利用者が歩く通路の下には、円柱が立ち並び、大理石で舗装された古代ローマの大通りの遺跡が横たわっているのだ。 地下鉄の建設工事中、作業員らは今から2300年以上前に敷設された道路を発見した。ある学者が「ビザンチンのポンペイ」と呼んだこの発見は、激しい論争を巻き起こした。建設業者側は、工事を続けるために遺跡を移動させる必要があると主張。一方、文化財の保護主義者らは、街の歴史の記念として、遺跡を元の場所に残すべきだと訴えた。 結局、長い論争の末に勝利したのは後者だった。工事を請け負った企業は地下鉄路線の設計を大幅に見直し、当初の計画より35メートル以上深くトンネルを掘削した。これにより、ビザンチン時代の市場を通っていたかつてのにぎやかな通りは、考古学的な遺跡としてそのままの状態で保存され、一般公開されることになった。 現在、この通りの一帯は、かつての商店や公共施設を覆っていた石壁の破片とともに、ベニゼル駅構内に設置された地下博物館の一部を形成している。乗客は最新の無人運転式の地下鉄に急ぎ足で乗り降りしながらも、透明な吊り床を通して遠い過去を垣間見ることができるようになっている。 カテリナ・サケラロプル大統領らとともに駅を視察したギリシャのキリアコス・ミツォタキス首相は、写真共有アプリのインスタグラムで、「この街の文化的な豊かさを余すところなく際立たせる、前例のない技術プロジェクトだ」と称賛した。 テッサロニキに新設された地下鉄は、ギリシャを債務不履行に陥れた金融危機の影響や、多くの人口を抱える大都市での近代的な都市交通の発展と古代遺跡の保存を両立する困難に直面し、完成までに20年近くを要した。 米AP通信によると、ギリシャのフリストス・スタイクラス運輸相は地下鉄開通前の報道陣への公開で、プロジェクトは多くの課題に直面し、大幅に遅れたと説明。工事中に発掘された考古学的遺物は30万点を超えるが、その多くは現在、地下鉄の各駅で展示されていると述べた。運輸省によれば、この新路線は1日当たり25万人の乗客を見込んでいるという。 テッサロニキは、エーゲ海北西部のテルマイコス湾に面している。マケドニア王国のカッサンドロス王は、紀元前316年頃に都市を建設し、アレクサンドロス大王の異母妹である妻のテッサロニケにちなんでテッサロニキと名付けた。ローマ帝国、ビザンチン帝国、オスマン帝国に支配されたテッサロニキには、それぞれの足跡が残っている。 ベニゼル駅では、古代ローマ時代の大通りに加え、葬祭の記念碑で飾られた古代ギリシャ時代の墓地や、初期キリスト教のバシリカ聖堂、給水・排水設備など、地下鉄建設工事中に発掘された考古学的遺物が展示されている。ベニゼル駅以外でも、全長約10キロの路線に設置された13駅では現在、複数の時代にまたがるモザイク装飾や陶器の破片、宝石や食器といった、小さな遺物の一部が公開されている。現代の交通手段と貴重な古代の遺物が融合したこれらの「考古学駅」は、乗客を単なる通勤だけでなく、時を超えた旅へと誘う。
Leslie Katz