裁判官「不正は自分のため」、友人「弁護士より収入少なく見返したかったのでは」…インサイダー告発
裁判官が職務に関する不祥事で刑事責任を問われるのは極めて異例。発覚しやすい本人名義での取引に及んだことに、裁判所のある幹部は「前代未聞で、裁判官一般の信頼をも失墜させかねない」と嘆いた。
出向中の佐藤容疑者は裁判官の身分から外れており、23日、金融庁から懲戒免職処分を受けた。最高裁の徳岡治・人事局長は同日、「誠に遺憾。このようなことは決してあってはならず、一層の綱紀の保持を図りたい」とのコメントを出した。
東証社員 父にTOB情報
一方、今年1~3月、父親に上場企業の未公表情報を繰り返し伝達したとして告発された東証社員・細道慶斗容疑者(26)(23日に懲戒解雇)は新潟県出身で、東北大を卒業後、東証で勤務するようになった。
所属先の上場部開示業務室は上場企業の適時開示などを担当し、TOBなどの未公表情報が集まる。細道容疑者はTOB対象企業名を知ると、故郷で自動車整備会社を営む父の正人容疑者(58)に伝え、正人容疑者が自身の名義で株を買い付ける行為を繰り返していた。1銘柄あたりの買い付け額は約1020万~約240万円に上ったという。
知人によると、正人容疑者は「息子が証券取引所に就職し、良いところに決まった」と自慢げに話していたという。
告発を受け、東証を傘下に持つ日本取引所グループ(JPX)の山道裕己(やまじひろみ)・最高経営責任者は23日、「投資家、上場会社をはじめ皆様にご迷惑をおかけしていることを深くおわび申し上げる」と謝罪した。
加藤金融相は23日夕、記者団に「金融市場そのものの信用を揺るがすもので、大変遺憾だ」と述べた。
投資家 怒りの声
政府が「資産運用立国」の旗の下で、国民に投資を促す中、市場の公正を守り、高い職業倫理が求められる金融庁職員や東証社員による不祥事に、個人投資家らは不信を募らせている。
2年前に株取引を始めた横浜市の会社員男性(30)は、「立場を利用して得た未公表情報で利益を得ていたのだとしたら、一般投資家と比べて極めて不公平だ」と批判した。茨城県古河市の団体職員男性(41)は「あまりにもモラルに欠ける。国民の信頼を失墜させる行為で、不信感しかない」と話した。