『海のはじまり』第3話 2つの“ぎゅっと握りしめる”シーンに込められた繊細な演出
Snow Manの目黒蓮が主演を務めるTVドラマ『海のはじまり』(フジテレビ系)の第3話が、7月15日に放送された。今回のエピソードは、水季(古川琴音)が娘・海(泉谷星奈)の身長を測るシーンから始まる(これまでの3エピソードを観ていると、常に本作のオープニングは今は亡き水季の回想シーンで幕を開けている)。これから図書館の仕事に向かう母親に、悲しそうな表情をみせる海。水季はそんな彼女に「いなくならないよ」と優しく語りかけるのだった。(以下、ドラマのネタバレを含みます) 【写真】ドラマファン待望のドラマ『海のはじまり』 そして物語は現代パートへ。海からランドセルを見せてもらった夏(目黒蓮)は、「水季がこれにしたの?」と問いかけると、「海に選ばせてくれた!」と笑顔で返す。思い返してみると、第2話で水季は母の朱音(大竹しのぶ)に、「海に選ばせてあげて。正解を教えるより、自分の意思で選ぶことを大事にさせてあげて」と語っていた。海は自分の意思で<選択>ができる女の子なのである。 一方の夏は、恋人の弥生(有村架純)に「“うん“と“ううん”の間みたいな返事、やめれる?」と注意されていたくらい、自分で<選択>ができないキャラクターだ。<選択>する娘と、<選択>できない父親。第1話から丁寧に描かれてきた<選択>というテーマが、ランドセルをモチーフにして描かれている。おそらくこのドラマは、今後も通奏低音として<選択>をドラマに忍ばせていくだろう。 やがて夏、海、弥生の3人は、かつて水季が勤めていた図書館へ遊びに行く。そこには、水季の同僚で夏に複雑な感情を抱いている津野(池松壮亮)がいた。何かと「すいません」を繰り返す夏に、津野は「すぐ謝らないでください」と諭す。おそらく夏にとって「すいません」とは、条件反射のように口に出てしまう言葉なのだろう。だが同時にそれは、完全なる思考停止でもある。これ以上意見は述べませんという、自分自身の放棄でもある。 他者から何かを指摘されると、すぐに「すいません」と謝罪して、本当の思いを胸の奥にしまいこんできた夏。実はこれが、第3話のクライマックスに向けて大きな伏線となっていく。