“レース史上最大着差”で有馬記念制したシンボリクリスエス 種牡馬としては芝・ダ兼用の晩成型
【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】 ◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬 【写真】シンボリクリスエスのこれまでの軌跡 【シンボリクリスエス】 3歳春に青葉賞を勝って頭角を現し、日本ダービーはタニノギムレットの2着。その年の秋に本格化し、天皇賞(秋)と有馬記念を制覇しました。4歳を迎えるとさらにパワーアップし、天皇賞(秋)と有馬記念をそれぞれレコードで楽勝。後者は2着以下に9馬身差をつけるレース史上最大着差でした。 父クリスエスはロベルト系のなかでもスタミナと底力に富んだラインで、英ダービー馬クリスキンやBCターフを勝ったプライズドなどを出しており、日本では他にアルゼンチン共和国杯を勝ったマチカネアレグロが出ています。新種牡馬ナダルもクリスエスの直系子孫です。 種牡馬としては芝・ダート兼用の晩成タイプ。ロベルト系らしく瞬発力よりもスピードの持続力に強みがあります。大柄な馬体と健康な四肢を伝え、JRAで重賞を勝った25頭はすべて牡馬かセン馬、という性別の偏りがありました。2009、2011、2013年に種牡馬ランキング3位となっており、これがパーソナルベストです。エピファネイア、サクセスブロッケン、ストロングリターン、ルヴァンスレーヴ、アルフレードなど、芝・ダートを問わず活躍馬が誕生し、現時点で芝494勝、ダート539勝という成績です。後継種牡馬のなかではエピファネイアが大成功を収めているので、サイアーラインはしばらく安泰でしょう。 ◆血統に関する疑問にズバリ回答! 「凱旋門賞はなぜサドラーズウェルズ系が強いのですか?」 直近10年間でサドラーズウェルズ系に属さない勝ち馬はゴールデンホーンのみ。同馬はダンジグ系のケープクロス産駒でした。2015年の優勝馬なので、翌年以降サドラーズウェルズ系が9連勝しています。 今回の馬場状態は「重」。この時季のパリは雨が多いため、馬場が重くなることが多く、そうした馬場を得意とするサドラーズウェルズ系が強い、ということがまず言えます。 ヨーロッパ生産界の頂点に君臨するクールモアグループがサドラーズウェルズ系の元締め的存在で、その力は欧州芝2400m路線において絶大です。それが凱旋門賞の結果として表れている、とも言えるでしょう。 ただ、昨年の凱旋門賞は1~3着がフランケルの系統で、フランケルはガリレオ産駒でありながらクールモアではなくジャドモントの所有馬です。クールモアの大エースだったガリレオ亡きいま、サドラーズウェルズ系であっても以前に比べてクールモア以外の活躍馬が目立つようになってきており、今年の優勝馬ブルーストッキングも、クールモア繋養のキャメロット産駒ながら生産者と馬主はジャドモントです。 米三冠馬ジャスティファイはクールモア所有の種牡馬で、今年の欧州中距離路線の主役だったシティオブトロイなどを出しています。ウートンバセット、セントマークスバシリカなど、クールモアの有力種牡馬は徐々にサドラーズウェルズ以外の系統にシフトしているようにも見受けられるので、数年後には凱旋門賞の血統地図も変わっているかもしれません。