日本製鉄が2つの訴訟 専門家は訴訟戦略に「疑問が残る」【WBS】
狙いは証拠を集めて
「改めて日本製鉄の2つの訴訟について整理します。1つ目はバイデン大統領らに買収禁止の取り消しを求める行政訴訟。もう一つはUSWとUSスチールのライバルであるクリーブランド・クリフス社に対する損害賠償を求める民事訴訟です。この2つの訴訟の意味するところは何でしょうか」(相内優香キャスター) 「国の安全保障に関する大統領の権限は非常に大きい。それを踏まえると、行政訴訟で勝つのは非常に難しい。証拠の開示を認める可能性も相当低いのではないか。そこで日鉄は民事訴訟により、政治問題化して買収の邪魔をしようとしたということで訴え出た。民事訴訟で大統領との結託が証拠開示されれば、行政訴訟にも希望がつながる。日本政府内でも去年の春先からクリーブランドの動きがおかしいという声はあった」(原田亮介WBS解説キャスター) 「クリーブランド・クリフス社はもともとUSスチールを買収しようとしていましたが、独占禁止法に懸念があるとしてUSスチール側が拒否したという経緯があります」(相内キャスター) 「日本製鉄の自動車鋼板の技術をUSスチールに導入すると、クリーブランドの製品との格差が大きく開く。クリーブランドにとってみると、USスチールの買収が成立しない方が会社にとってプラスになる。アメリカの自動車メーカーにとっても、クリーブランドとUSスチールが合併することは寡占になって、値段も品質もよくなくなるため反対している。クリーブランドはUSスチールの買収に意欲を示しているが、結局この買収禁止令を歓迎しているのはクリーブランドとUSW、この2つだけということで非常に残念な経緯になっている」(原田WBS解説キャスター) 「経済的には非合理的な判断になってしまっているのですね」(相内キャスター) ※ワールドビジネスサテライト