日本製鉄が2つの訴訟 専門家は訴訟戦略に「疑問が残る」【WBS】
専門家「大統領令は非常に強い」
日本企業がアメリカの大統領を訴えるという異例の事態。アメリカの企業訴訟に詳しい「ベーカー&マッケンジー法律事務所」の井上朗弁護士は、バイデン大統領らを被告とする行政訴訟について「大統領令はまず非常に強い。行政訴訟の方が非常に厳しい。勝てる可能性はとても低い」と話します。 一方、民事訴訟について、井上弁護士は勝つ見込みがあると指摘しますが「民事訴訟ではライバル企業と組合から多少、金が取れたが、その事業目的というのは達成ができないという帰結に終わる。この訴訟戦略が本当に日鉄のためかというと、ちょっと疑問が残ってしまう」と話します。 井上弁護士は行政訴訟では勝てないため、買収禁止命令は有効なまま、民事訴訟で賠償金を勝ち取るのが、日本製鉄側が得られる最大限の結果ではないかと見ています。 そうした中、7日に岩谷外務大臣が会談したのは、来日中の米国のブリンケン国務長官です。岩谷外務大臣は会談で買収禁止の判断は極めて残念だと伝えました。 この問題について記者から「バイデン大統領の決定が日本に対して侮辱だという発言もあるが」と問われたブリンケン長官ですが、無言で去っていきました。 一方、20日に就任するトランプ次期大統領は自身のSNSに「関税によってより高収益で価値ある企業になるのに、なぜ売却したいのだろうか」と投稿しました。 この件で質問が及ぶと、橋本会長は「アメリカの新政権、新メンバーの人にはこの買収プロジェクトがUSスチールをいかに強くし、米国鉄鋼業の強化にもつながり、米国産業全体の強化にもつながる。それを説明することで理解を得られる」と強気の姿勢を示しました。 経団連の十倉会長は「経済安全保障を理由に、こういう決定がなされたことに対して日米経済関係に何か影響を及ぼさないか憂慮している」と話しました。 他にも日本の大企業の経営者たちからは懸念の声が相次いでいます。 「DeNA」の南場智子会長は「経営者としては一番見たくない光景。アメリカに対して一定の信頼があったが、少し裏切られた気持ちもある」と話し、キリンホールディングスの磯崎功典会長は「政治が介入してくるとは思わなかった。他の企業もアメリカへの投資に二の足を踏むようになると思う」と懸念を示しました。三井住友銀行の福留朗裕頭取は「こうした事態を今後のリスクファクターとして、経営者は頭の隅に入れておかなくてはいけない」と発言しています。