常に独自の視点で独自の音楽を生み出していくDJとして世界中で活躍する田中知之（FPM)さん。音楽のみならずファッション、時計、クルマ、グルメとオールジャンルでの博覧強記を駆使した田中流「男の定番」をご紹介する連載です。 田中知之（FPM）の「DJ目線で指南するちょいウラな定番」

■ 「IWC」のヨットクラブ

非常に着心地の良い、かと言って特にこれみよがしに主張することもなく、とてもさり気ない。言わば上質なシーアイランド・コットン素材の白いポロシャツのような腕時計、それがこのIWC（International Watch　Company）のヨットクラブだ。 IWCは1868年にスイスのドイツ国境近くの街で創業した。そのためか、ドイツの職人気質にも影響を受け、質実剛健な時計作りを続けるとても優良なブランドだ。ロレックスやパテック フィリップほどの知名度や、オーデマ ピゲのような華やかさもないが、昔から本物嗜好の紳士に根強い人気がある。特に70年代以前のヴィンテージは“オールドインター”の愛称で呼ばれ、独特の雰囲気を纏う。

そして60年代後半に登場したこのモデルは、そのペットネームのとおりヨット乗りのための腕時計。防水性の高いスクリューバック式ケースを採用し、IWCの独自のペラトン式の自動巻き機構で重みのあるローターを使用し、巻き上げ効率も良く、耐久性や仕上げの美しさにも定評がある自動巻き式ムーブメントであるキャリバー8541Bを搭載。 ムーブメントとケースの間にリングが入り、さらにラバーが付き、その構造が衝撃を吸収する設計だ。特にこのシルバー文字盤の個体はスポーツウォッチとしての堅牢性を持ち合わせていながらも、ドレスウォッチのような繊細さも漂う非常に使える一本だと私は思う。

▲ ジェラルド・ジェンタにしては、非常にシンプルで簡素なデザイン

ジェラルド・ジェンタにしては、非常にシンプルで簡素なデザインがとても好感度が高いと僕は思う。ジェンタは後にIWCにおいて、このモデルの続編となる「ヨットクラブⅡ」や「インヂュニアSL」もデザインしているが、これらはいかにもジェンタっぽい仕上がりとなっている。