ブレスレット型のスマホや画面が伸びる端末まで 『MWC Barcelona 2024』で見た“近未来のスマホたち”
画面が折りたためるスマートフォンや、デジカメにソックリなデザインのモデルなど、従来とはデザインも機能も異なるスマートフォンが海外では次々と生まれている。それではこれからどんなスマートフォンが世の中に出てくるのだろうか。スマートフォンメーカー各社が開発中の「未来のスマホ」をモバイル関連の展示会、『MWC Barcelona 2024(スペイン)』で見てきた。 【写真】ぐにゃりと曲がって腕に巻き付く! 自由自在な「折り曲げスマホ」 ■スマホの画面がぐにゃりと曲がる、腕にも巻き付く「折り曲げスマホ」 まずはこの写真を見てほしい。これはスマートフォンだ。ところが画面が曲がっているのがわかるだろうか? これはモトローラが開発中の曲げることのできるスマートフォンのコンセプトモデルだ。「Adaptive Display」と呼ぶこのディスプレイは、どの部分からも曲げることができる。 たとえば端のほうだけ曲げれば、スマートフォンを机の上に立てて使うことができる。他の作業中にSNSのタイムラインを流したり、動画を見たり、あるいはビデオ会議をするのにも便利だろう。この形状に曲げたときは正面に見える部分だけに画面表示ができるようになるなど、ユーザーインターフェースも形状に応じて変わるようになっている。 そして手首に巻き付ければ、外出中にスマートフォンをポケットやバッグに入れる必要もなくなる。完全に手ぶらで出かけることができるし、通知や着信があれば手首を見ればすぐに応答できる。スマートウォッチとは異なり、スマートフォンのすべての機能が使えるので、このまま写真を撮ってSNSに公開したり、改札口にタッチして電車に乗ることも出来そうだ。スマートフォンの持ち方、使い方も変えてしまう製品になるだろう。 ■画面を左右に自在に伸ばせるローラブルスマホ スマートフォンを使っていて「画面が狭いな」と感じることはないだろうか。映画を見ていればより大きな画面が欲しくなるし、SNSのタイムラインを見ながら同時に検索もしたいとき、2つのアプリを表示するのも大変だ。すでに世の中には折りたたみ型のスマートフォンがあり、必要な時は本体をひらけば大画面が現われる。しかし画面をいちいち閉じたり開いたりするのは面倒である。 TECNOが開発したコンセプトモデル『PHANTOM Ultimate』は、通常時に6.55インチの画面を持つスマートフォンだ。そして本体上部のボタンを押すと、画面が自動的に左右に伸びて7.11インチへと広がる。もうちょっと大きい画面が欲しい、と思えば2秒以下で変形するのだ。ボタン式なので収縮操作も楽に行えるし、折りたたみスマートフォンのように本体サイズが厚くなることも無い。 この仕組みの秘密は本体の左側面に軸があり、裏側に巻き取られていたディスプレイがボタンひとつで前後に動くようになっている。複雑な気候のため製品化には時間がかかりそうだが、折りたたみスマートフォンの次世代モデルとして注目が集まっている。 ■迫力ある音楽を聴きたければ、大型スピーカーをつければいい スマートフォンの音楽再生機能も年々向上しているが、スマートフォン単体で大音量、高品質で音楽を聴きたいと思ったことはないだろうか。『nubia Music』は音楽再生に特化したスマートフォンで、まもなく実際に発売される製品だ。本体の背面を見るとカメラのように見える丸い台座は大型スピーカー。サイズは公表されていないが一般的なスマートフォンの600%の音量で音楽を再生できる。またDTS:X Ultraにも対応した。音楽プレーヤーアプリはレコード盤を模したデザインで、音楽再生中はディスプレイの縁の部分がカラフルに光るライトエフェクトも搭載している。 スピーカーで大音量を流したいという需要は休日の自宅で音楽を楽しみたいという他に、東南アジアやインドなどでは夜に公園などに人が集まり音楽を掛けながらみんなで踊りまくる、なんて用途もあるのだろう。しかし『nubia Music』はそれだけではなく、カップルが音楽を楽しめるようにとヘッドフォン端子を2つ用意している。同じ音楽を手軽に共有できる機能も搭載しているわけだ。 ■スマホの画面で3D映像を楽しめるようになる 3D映像をスマートフォンの画面でも手軽に楽しめる試作モデルを展示していたのはStrongだ。3Dを見るとなると専用のメガネが必要なことが多いが、このスマートフォンは動画を再生するだけでそのまま3D映像を見ることができる。しかも普通の動画もスマートフォン本体内で3Dに変換してくれるので、自分で撮った動画などを奥行き感のある3Dで再生も可能なのだ。 本体が若干厚みのあるサイズになっているのは、裸眼3D表示対応のディスプレイを搭載しているからのようだ。Strongの親会社、Skyworthは世界でもシェア上位に入る中国のTVメーカー。中国では北京オリンピック中継の3D放送も行われるなど、3D熱が高まっている。3D表示スマートフォンはそう遠くないうちに販売されるだろう。 ■スマホの電波が入らなくても世界中で使える衛星スマホ 最近のスマートフォンは衛星通信に対応していることを知っているだろうか?たとえば『iPhone 14』や『iPhone 15』はアメリカなどで緊急時に衛星を使ったメッセージ送信ができる。とはいえ衛星通信を本格的に行うには大きなアンテナが必要であり、一般的なスマートフォンでは簡易的な機能しか使えない。 衛星通信に対応するスマートフォンや携帯電話は販売されているが、大きなアンテナがあるため日常的に使うにはサイズが大きすぎる。ところがThurayaが今年秋に発売予定の『SKYPHONE』は、普通のスマートフォンサイズの中に、収縮式の薄いアンテナを備えている。一般的なスマートフォンよりやや厚みがあるが、スーツのポケットにも入るサイズで日常的に使うこともできる。山岳地のみならず、フェリーに乗って海上に出たときなど、スマートフォンの電波が入らなければアンテナを引き出して衛星通信ができるのである。しかも通話や速度は遅いがデータ通信も可能だ。『SKYPHONE』があれば本格的な登山はもちろん、災害時にも安心してスマートフォンを使えそうだ。 ■アプリが不要、話しかければ何でもできる「AIスマホ」 スマートフォンで何かをするためにはアプリを使う必要がある、そんな常識を無くしてしまう「AIスマートフォン」をドイツの通信キャリア、ドイツテレコムが開発中だ。この写真のように、スマートフォンに向かって質問をなげかけるだけで検索も自在にできるのだ。ChatGPTなどAIアプリをパソコンで使っている人も多いと思うが、それとほぼ同等の機能を搭載しているのがAIスマートフォンなのである。 デモではプレゼントや航空券の検索を見せてくれた。「明日、バルセロナからパリに行きたい」と話しかけると、数秒でその検索結果が出てくる様を実際に見ることができた。現状では最終的な航空券の購入はアプリに移動するが、将来は検索画面から「3番目のフライトを予約して」「座席は前方の窓側」「支払は登録しているクレジットカードで」のように、すべて音声だけで済ませるようになる。スマートフォンの画面上にたくさんのアプリアイコンを並べ、それを整理する必要もなくなるのだ。 ■究極のAIデバイス『AI Pin』を見た ドイツテレコムのAIスマートフォンのさらに先を行くデバイスがHumaneの『AI Pin』だ。胸につけるバッジ型のデバイスで、話しかけるだけで音声で回答をしてくれる製品なのだ。とはいえそんなことが実際にできるとは想像しにくい。MWCでは実物のデモが行われ、「今日の天気は」「この辺りで美味しいレストランを教えて」といった音声質問に対し『AI Pin』がクリアかつ大きな音声で実際に回答する動作を体験できた。 『AI Pin』には小型のカメラとプロジェクターも搭載されており、『AI Pin』の前で指先を動かすジェスチャー操作も可能だ。また数行の文章や、操作用のパネルを手のひらに投影することもできる。これらの動作はすべて実際にデモがなされたが、実用性は十分あると感じられた。ポスト・スマートフォンとして最も有力なデバイスだろう。 ■スマートウォッチの次はスマートリングだ サムスンが展示していた『Galaxy Ring』は指に装着する指輪型の「スマートリング」と呼ばれるデバイスだ。スマートウォッチのように運動データを計測したり、心拍数の測定などができる。なによりも小型であり充電も数日おきで済むため、睡眠中の健康データも連続して取得可能だ。スマートウォッチは高機能だが夜中に充電する必要があるため、自分の健康状態を完全に把握しにくいという欠点がある。健康状態を把握したい人のためのデバイスとしてスマートリングはこれから注目を高める製品になるだろう。『Galaxy Ring』の発売時期は未定だが、早ければ今年の夏と噂されている。
山根康宏