2番人気は「freee」、注目の1位は?個人事業主に聞いた「会計ソフト」実態調査
年も明け、まもなく確定申告シーズンが到来する。締切直前に慌てないよう早めに準備を始めておきたいものだが、その際頼りにしたいツールが「会計ソフト」だ。 今年はインボイス制度の開始、電子帳簿保存法の改正などへの対応もあり、新たに会計ソフトを探している人も多いのではないだろうか。 そこで税理士ドットコムでは、フリーランスなどの個人事業主を対象に、会計ソフトの利用状況についてアンケートを実施した。 まず、会計ソフトの利用状況について聞いたところ、回答者の85.2%が「利用している」と回答。そのうち77.2%の人が「クラウド型」を利用しているという結果となった。 問:会計ソフトを利用していますか? ・利用している…85.2% ・これから利用する予定…6.1% ・利用していない…8.7% 問:(上記で「利用している」と回答した方への質問)利用している会計ソフトは、クラウド型・インストール(パッケージ)型のどちらですか? ・クラウド型…77.2% ・インストール(パッケージ)型…21.1% ・わからない…1.7% 以下からは、「クラウド型」「インストール(パッケージ)型」の利用者ごとに分けてアンケート結果をみていこう。 ●「クラウド型会計ソフト」ユーザーの利用状況 「クラウド型会計ソフト」ユーザーへは次の質問をした。 <クラウド型を選んだ理由> <利用しているクラウド型ソフトとその製品を選んだ理由> <利用しているクラウド型ソフトのおすすめポイント> <年間費用> まず、クラウド型を選んだ理由としては「インターネット環境があれば利用できるから」が約82%と最も多く、「初期費用がかからず導入しやすい価格だから」が約50%と次ぐ結果となった。 問:クラウド型会計ソフトを選んだ理由をお教えください ※複数回答 ・インターネット環境があれば利用できるから…82.1% ・初期費用がかからず導入しやすい価格だから…50.0% ・最新の会計ソフトが利用できるから…41.1% ・法改正の内容が即時に反映されるから…37.8% ・リアルタイムで会計や経営の状況がわかるから…25.6% ・税理士や複数人でのやりとりに便利だから…17.9% ・周りに使っている人が多いから…9.8% ・特に理由はない…2.8% ・その他…3.6% (その他:Macに対応しているから、スマートフォンからも入力できるから、帳簿のバックアップが容易だから、など) 次に、利用している製品について、1位が「弥生会計」約45%、2位「freee」約30%、3位「マネーフォワード」約20%と、大手会計ソフトでシェア9割を超える結果となった。 問:利用している会計ソフトを以下からお選びください ・やよいの白色申告オンライン、青色申告オンライン …45.9% ・freee会計…30.6% ・マネーフォワードクラウド確定申告…19.8% ・クラウド円簿…1.2% ・FXクラウド…0.8% ・ツカエル青色申告オンライン…0.8% ・ちまたの会計…0.4% ・その他…0.5% (2つのソフトを利用、など) 問:(利用しているクラウド型会計ソフトについて)選んだ理由をお教えください ※複数回答 ・使いやすそうだったから…56.9% ・コストが安かった、または無料で使えたから…46.3% ・知名度があるソフトだったから…37% ・機能が充実していたから…24.4% ・サポートが充実していたから…10.2% ・知人にすすめられたから…10.2% ・税理士にすすめられたから…8.9% ・ほかの会計ソフトが見つけられなかったから…0.8% ・特に理由はない…2% ・その他…6.9% (その他:Macで使えるから、パソコンを買い換えても、データ引き継ぎや再インストールの必要がないから、など) 問:(利用しているクラウド型会計ソフトについて)おすすめポイントをお教えください ※カッコ内は利用している製品名 (freee会計) ・スマホでレシートを撮影して仕訳までできる ・記帳の方法がシンプルで初心者でもわかりやすい ・入力方法などのサポート情報が多く掲載されているので、わからなくなったときに事例を調べられる ・簿記の知識があまりなくても使いやすいと思うから (やよいの白色申告オンライン、青色申告オンライン) ・電話サポートがあるので安心 ・チャットでも質問できて便利 ・いろいろなところの無料版を試してみて、いちばん使いやすかった ・疑問点については公式サイトでほぼ網羅されている。そこで解決しない場合でも、ユーザー数が多いのでネット上で一般人による解説が得られる ・家計簿アプリ感覚で簡単に必要事項を入力でき、収支内訳書をはじめとした必要書類のデータも自動で算出してくれるのがいい (マネーフォワードクラウド確定申告) ・Amazonで購入したものの証憑を自動で取得してくれる ・金融機関等の自動連携、自動仕訳ができる 問:(利用しているクラウド型会計ソフトについて)費用金額を教えてください ・年1万円未満…46.0% ・年1万円以上3万円未満…47.8% ・年3万円以上5万円未満…4.0% ・5万円以上…2.2% ●「インストール(パッケージ)型会計ソフト」ユーザーの利用状況 続いては、「インストール(パッケージ)型」ユーザーの回答を見ていこう。 質問項目は以下のとおり。「クラウド型」ユーザーとほぼ同様だが、費用については初期費用とランニングコストについてそれぞれ質問を設けた。 <インストール(パッケージ)型を選んだ理由> <利用しているソフトとその製品を選んだ理由> <利用しているソフトのおすすめポイント> <導入時にかかった初期費用> <年間のランニングコスト> まず、インストール(パッケージ)型を選んだ理由としては、クラウド型よりも「動作の安定性」という点においてメリットを感じる人が多い結果となった。 問:インストール(パッケージ)型を選んだ理由をお教えください ※複数回答 ・動作が安定しているから…43.5% ・インターネット環境がなくても利用できるから…40.1% ・一度購入すれば維持コストが多くかからないから…40.1% ・クラウド型はセキュリティに不安があるから…25.6% ・クラウド型に比べて多機能だから…17.9% ・周りに使っている人が多いから…12.8% ・特に理由はない…17.9% ・その他…12.8% (その他:クラウド型がない時代に会計ソフトを導入したから、など) 利用している製品については、「弥生」シリーズが半数を占める結果となったが、クラウド型よりも比較的さまざまなメーカーの製品がランクインした。 問:利用している会計ソフトを以下からお選びください ・弥生会計…28.9% ・やよいの青色申告…26.3% ・みんなの青色申告…10.5% ・ジョブカン青色申告…7.9% ・aoiro…7.9% ・わくわく財務会計…5.3% ・フリーウェイ経理Lite…2.6% ・財務顧問…2.6% ・ソリマチ農業簿記…2.6% ・その他…5.4% 問:(利用しているインストール型会計ソフトについて)選んだ理由をお教えください ※複数回答 ・使いやすそうだったから…53% ・知名度があるソフトだったから…31.8% ・コストが安かった、または無料で使えたから…29.5% ・サポートが充実していたから…13.6% ・機能が充実していたから…11.4% ・税理士にすすめられたから…11.4% ・知人にすすめられたから…9% ・経理担当者が選んできたから…4.5% ・ほかの会計ソフトが見つけられなかったから…4.5% ・その他…15.9% (その他:会社員時代に使ったことがあったから、確定申告講習会で配布されたソフトだから、など) 問:(利用しているクラウド型会計ソフトについて)おすすめポイントをお教えください ※カッコ内は利用している製品名 (やよいの青色申告) ・費用はかかるがサポート体制がしっかりしており、システムとしても問題がないから (aoiro) ・余計な機能がなく、小規模事業主には大変おすすめ ・買い切り3000円程度でずっと使えるのは非常にお得 (フリーウェイ経理Lite) ・経理の知識があれば費用がかからない (弥生会計) ・記帳方法の質問に迅速に対応してくれるので使いやすい (ジョブカン会計) ・スマホでレシートを撮影して文字起こししてくれる (みんなの青色申告) ・会計知識があまりなくても簡単に操作できる 続いては費用について、導入時の「初期費用」と導入後の「ランニングコスト」をそれぞれ質問。「初期費用3万円未満」「ランニングコスト年1万円未満」が最も多い結果となった。 問:(利用しているクラウド型会計ソフトについて)導入時の初期費用を教えてください ・初期費用3万円未満…79.5% ・初期費用3万円以上5万円未満…10.3% ・初期費用5万円以上10万円未満…5.1% ・初期費用20万円以上…5.1% 問:(利用しているクラウド型会計ソフトについて)サービスオプション等のランニングコストは年間どのくらいですか? ・年1万円未満…69.2% ・年1万円以上3万円未満…17.9% ・年3万円以上5万円未満…7.7% ・年5万円以上…5.2% ●決め手は「コスパ」より「使いやすさ」 会計ソフトを選ぶ際の基準は、金額(費用感)はもちろん、使いやすさ、機能面など利用者によってさまざまだろう。 そこで、実際に会計ソフトを利用していると回答した人に「何を重視して選ぶべきか」を質問。 その結果、「経理知識がなくても使いやすいか」との回答が8割を超え、「コストパフォーマンスのよさ」48%を大きく上回る結果となった。 問:実際に使用してみて、会計ソフトは何を重視して選ぶべきだと思いますか? ※複数回答 ・使いやすさ(経理知識がなくても使いやすいか)…87.7% ・コストパフォーマンスのよさ…48.4% ・サポートが充実しているか…39.3% ・機能が充実しているか…37.9% ・その他…1.1% また、会計ソフトを選ぶ際、およそ60%の人が機能面や金額、使用感について「複数の製品を比較検討してから決めた」と回答した。 問:会計ソフトを決める際に、ほかの商品と比較はしましたか? ・複数の製品の中から機能を検討して決めた…30.9% ・複数の製品の中から金額を検討して決めた…18.6% ・複数の製品を実際に試してみて決めた…11.2% ・特に比較検討はしなかった…36.5% ・わからない/覚えていない…2.8% ちなみに、「現在使用中の会計ソフトを変更する可能性がある」という人が19.3%おり、その理由としては「使い勝手がよくなかった」「他の会計ソフトのほうが機能性が充実しているから」などが挙げられた。 問:現在使用中の会計ソフトを今後別の製品に変更する可能性はありますか? ・ある…19.3% ・ない…40.7% ・わからない…40% 問:会計ソフトの変更を検討している理由についてお教えください ※複数回答 ・使い勝手があまりよくなかった…29% ・他の会計ソフトのほうが機能性が充実しているため…21.8% ・他の会計ソフトのほうがサービスが充実しているため…14.5% ・他の会計ソフトのほうが価格が安いため…14.5% ・税理士と同じ会計ソフトを利用したいため…9% ・知人や経理担当者にすすめられたため…7.3% ・事業規模の拡大や法人化により、現在のソフトでは対応できないため…5.5% ・クラウド型の会計ソフトに変更したいため…3.6% ・インストール型の会計ソフトに変更したいため…3.6% ・最新の法改正に対応していないため…1.8% ・その他…18.2% (その他:価格改定で値上がりしたため、など) ●ブランド名やコストにとらわれず、自身の事業状況に合ったソフト選びがカギ なお、「会計ソフトを利用している」と答えた方の売上高については以下の通り。 <クラウド型ソフト利用者> ・300万円未満…42.7% ・300万円以上500万円未満…18.9% ・500万円以上800万円未満…11.0% ・800万円以上1000万円未満…6.6% ・1000万円以上…14.5% ・無回答…6.2% <インストール(パッケージ)型ソフト利用者> ・300万円未満…38.7% ・300万円以上500万円未満…11.3% ・500万円以上800万円未満…12.9% ・800万円以上1000万円未満…1.6% ・1000万円以上…24.2% ・無回答…11.3% いずれの会計ソフト利用者においても「売上高300万円未満」が4割いる状況から、会計ソフトの利用有無に関して売上規模はさほど関連性がないといえる。 アンケート結果では、会計ソフトを変更する可能性があるという人も19%いたが、実際のところ一度導入してしまうとすぐに変更するというのはなかなか難しい場合も多いだろう。 そのため、これから会計ソフトを導入・変更したいと考えている人は、ぜひこのアンケートを参考に十分検討してほしい。 ※アンケート実施期間:2023年12月4日~12月11日、調査方法:税理士ドットコムに登録のある個人事業主に対しインターネットで実施、有効回答数:345
弁護士ドットコムニュース編集部