【立民代表選】実効性ある政策論議を(9月7日)
立憲民主党代表選がきょう7日に告示される。次期代表は、政権交代への資質と力量がかつてなく試される。党所属議員、党員、協力党員にとどまらず、国民の支持を広く得られる政策を論じるべきだ。 泉健太代表は6日の記者会見で、派閥の裏金事件を起こした自民党に対し「レッドカードを突き付けて退場させなければならない」と再選への意欲を示した。野田佳彦元首相は「政権交代こそが最大の政治改革だ」と強調し、枝野幸男前代表は「自民党に代わる国民政党に進化する」と語っている。 先の通常国会で立憲民主党は、裏金事件の真相と自民党総裁としての岸田文雄首相の責任を繰り返し追及した。政治資金規正法の改正審議で自民党案は抜け穴だらけだと批判し、実効性のある改革を迫ったものの攻め手を欠いた。 内閣支持率は危険水域とされる20%台に続落し、連鎖して自民党の政党支持率も低下した。一方で、立憲民主党の支持率は必ずしも伸びたとは言えない。岸田首相が退陣を決断したのは、立民ほか野党が追い詰めた結果というより、厳しい世論を受けた自民党内圧力の帰結だろう。
自民党総裁選に名乗りを上げた立候補予定者は、政策活動費の廃止など、野党の株を奪う公約も掲げている。立民に本気で政権を奪う覚悟があるなら、国民の期待を背負えるだけの政治改革の対抗軸をきちんと示す必要がある。 外交・安全保障、防衛増税、人口減、少子化対策など国の存立に関わる問題は山積している。政治改革は、国会や政治への信頼を取り戻して重要政策を推進する前提でもある。ただ、政治改革の一点で政権を取れるほど世論の要請は単純ではないはずだ。国内の政治課題や国際社会の難局にどう対処するかも、明確に打ち出すべきだ。 泉氏は推薦人集めに最後まで苦心した。江田憲司元代表代行と吉田晴美衆院議員を巡っては、擁立の動きが最終局面まで続いた。泉氏には現代表としての自負がある。党内には、多様な人材をそろえなければ、自民党総裁選に埋没しかねないといった危機感もあるようだ。そんな余念に代表選が浮き足立てば、支持や理解は広がるまい。党の正念場と捉えた真摯[しんし]な論戦が求められる。(五十嵐稔)