100年の生涯を経て考える、美術家・篠田桃紅が人類に遺した「壮大な問い」
しようがない欲望と付き合うための“問い”
何でも、これでいいと満ち足りる気持ちをある程度を持てば、平和でのどかな地球になりえるだろうと。人の知恵がそこまで行けばいいと。だけど、人は何かを得れば、その先のものを得たいと、永遠に欲が止まらないからしようがない。 何が人間の幸福なのか。大昔から人は考え続け、文学や哲学、宗教などが追求し続けてきたけど、いまだにこれだという決め手がないわけですよね。ただ、あまりに欲望を満たそうとすると、周りが非常に困るし、最後は自分自身も欲望の虜になってしまう。 何でもほどほどに、と非常に曖昧な考え方になっている。はっきりしたことは誰も言えないんですね。 食は飢えぬほど、というのは非常に立派な考え方かもしれませんね。家も雨が漏らぬ程度。立派なものを建てようとするから、欲望は限りなくなる。欲望が少しでも満たされると、そこに人は生きがいがあると思ってしまう。 生きている以上、そうした欲望の虜になって暮らしてもしようがない、それが現代人の普通の暮らしになっている。欲望というものと、どういうふうにしてうまく付き合っていくか。人間の歴史への問いかもしれませんね」
篠田 桃紅(美術家)