フーシ派の攻撃で商船が「スエズ運河」を避けているのに、なぜ海運は平穏を保っているのか?
世界物流に大きな影響なし
スエズ運河の迂回が始まってからすでに100日以上が経過した。フーシ派が紅海南端にあるマンデブ海峡で船舶を狙うミサイル戦争を始めたのは2023年の末である。以降、商船はスエズ運河ルートを避けて、アフリカ大陸の最南西端に位置する喜望峰を遠回りする経路に切り替えている。 【画像】えっ…! これが空から見た「スエズ運河」です(計12枚) しかし、影響は限定的となっている。スエズ運河は世界物流の1割が通過する大動脈であり、その不通は世界経済を揺るがすといわれている。しかし、その事態に至ったにもかかわらず世界の海運は平時のままである。海上運賃も平時変動の範囲にとどまっている。 それはなぜだろうか。 それは、実際のところ、スエズ運河は 「死活的な価値を持っていない」 からである。そのため、喜望峰廻りとなっても世界の物流はあまり困ることもないのである。
海上貨物は急がない
スエズ迂回の影響が限定的なのはなぜだろうか。 第1の理由は、海上輸送は急ぐ貨物を扱わないことである。そのため喜望峰廻りとなってもあまり困らない。 今、商船はどのような商品を運んでいるのだろうか。 時間をかけてもよい荷物である。劣化するものではない。あるいは冷凍しても価値が落ちない商品である。 ひとつは、一次産品である。石油、液化天然ガス(LNG)、鉱石等の資源、小麦や大豆といった穀物、鋼材や木材の素材である。これらはおおむね専用船をつかって運んでいる。 もうひとつは、安価であり、とるに足らない商品である。水そのものであるミネラルウオーターはその好例である。大量生産するファストファッションのような雑貨やガチガチに冷凍できる普及価格の食肉の類である。こちらはコンテナ船で運ぶ。 逆に急ぐ貨物は、ほぼ扱わない。そのような商品は飛行機や鉄道で運んでいる。 だから、海上輸送はスエズ迂回となっても大した影響はでない。定時出発と定時到着のスケジュールさえ守れれば輸送時間が伸びたところで差し支えはないのである。