米国のデフォルト回避、背景に民主・共和の根源的な立場の違い 深刻な債務抱える日本こそ国民的議論が必要【ワシントン報告⑥デフォルト回避】
米国の場合、一見「小さな政府」を推進する共和党に任せれば、財政再建が図れるように思えるが、富裕層に対する減税政策が結果的に債務の増加につながることもある。「ブッシュ(子)、トランプ両政権の減税政策が、債務を57%増加させた」(財政専門家のボビー・コーガン氏)との分析もある。 今回債務上限が近づいたことで、米メディアは減税の在り方に加え、社会保障費や国防費をどうするべきか論陣を張った。社会保障費が大きな負担となっている点は日本とも共通する。政策決定に影響力を持つシンクタンクでは勉強会や討論会が開かれた。主張の是非はともかく、議会襲撃事件などの捜査を批判する共和党のトランプ前大統領による「司法省や連邦捜査局(FBI)が正気を取り戻すまで、議会共和党は予算を止めるべきだ」といった発言も、そうした議論の一環である。予算は税金で成り立っており、国民の主体的な議論の積み上げが欠かせない。 日本の財務省関係者は「財務省が取り回す日本と違って米国は議会が予算を編成する事情もあり、財政が広く議論されているように映る」と語った。
▽安倍元首相回顧録の批判 米議会超党派の対日友好議員連盟「ジャパン・コーカス」共同議長のエイドリアン・スミス下院議員(共和党)は歳入委員会のメンバーだ。日本を念頭に予算と税制の関わりを問うと、「結局、成長に結びつく形での税制が望ましい」と答えた。確かにその通りだが、やり方が難しい。 日本財務省は財政健全化に向けた道筋を付けるべく試みてきたが、有権者の意向をくむ政治家の抵抗もあって失敗している。財務省を敵視した安倍晋三元首相の回顧録は、2017年に予定していた消費税の引き上げ延期を巡り「予定通り消費税を引き上げていたら、経済は大変なことになっていましたよ」と批判した。 それは事実だとしても、先送りに伴う債務は後の世代につけとして回る。取り返しが付かなくなってからでは遅い。