札幌・中1女子生徒自殺事件「黒塗り」報告書の再公表、関係職員の懲戒処分も遺族のやり場ない憤り
札幌市教育委員会の対応に対し、遺族から疑問の声が噴出している。ことの発端は2021年、札幌市立中学校に通っていたとある女子中学生(1年)が遺書を残して自殺したことだった。
いじめが原因で自殺も、一部「黒塗り」で遺族不満あらわ
札幌市教育委員会が設置した調査検討委員会は23年12月、女子生徒が自殺したのは「いじめが原因」とした見解を示し、同日に公表した報告書では、「仲間外れ」「無視される」などのいじめを受けていたとした。 さらに女子生徒が小学生だったとき、小学校のアンケートにいじめを示唆する回答をしたにもかかわらず、学校側が追加の聞き取りを担任に一任。対策委員会を開かずに終わったことや、学校側にいじめについて伝えたもののその内容を重大事案とみなさず、生徒を叱ることもあったという。 「娘の命を軽視している。憤りを覚え嘆き悲しんでいる」 報告書が公表されたことを受け、女子生徒の両親は憤りをあらわにした。そのうえで、公表された報告書での「仲間外れ」等のいじめ以外に、「たたかれる」「蹴られる」等の暴力を含むそのほかの行為も報告書には記載されているとした。しかし、「法で示されるいじめの定義」には記載されていないことを理由として、「黒塗り」で内容が明かされていないと指摘した。 そして、「マスキング(黒塗り部分)をもっと外して開示してほしいことを再三伝えましたが『個人が特定される可能性がある』と拒否され飲み込むしかありませんでした」等と、市教委に対して不満をあらわにした。それを受けたのか、札幌市の秋元克広市長は「黒塗り」の開示を検討するように指示。23年12月末に開かれた校長らが集まる緊急集会の後、市教委の教育長が「マスキング部分(の開示)について改めて検討したい」と明言したのだ。
市教委が報告書を再公表、「奴隷扱い」「人形の手か足を切れ」...新たないじめの内容
それから1か月ほどたった今年1月末、教育長が記者団の取材に応じ、被害の実態等を開示した報告書を2月に再公表すると明らかにした。これにより、報告書は個人が特定されない程度で開示されることとなった。 その通り、市教委は2月14日に報告書を再公表した。新しく明らかになったいじめの内容は、「奴隷扱いされる」「加害者の家で、人形の手または足を切れと言われ、切らないと仲間には入れないと強制された」(どちらも小学校)ことがあったとした。また、中学校でのいじめでは、「SNSで攻撃的なメッセージを受け取った」「うその内容が記された婚姻届をいじめを受けた人物から受け取った」など、さまざまないじめを受けてきたと報告した。 なお、札幌市は報告書の再公表と併せて、「いじめ重大事態に係る関係職員の懲戒処分等について」と題するプレスリリースを公表。「教員ら及び学校が適切に対応していた場合には、自死を防ぐことができた可能性が十分にあったと指摘された」として、教員や職員の処分を発表している。処分を受けたのは、下記の8名。 (減給1か月)札幌市立小学校長(60代)男性 (文書訓告)札幌市立小学校長(60代)男性 (文書訓告)札幌市立中学校長(60代)男性 (文書訓告相当)札幌市立小学校教諭 (口頭厳重注意)札幌市教育委員会局長職(50代)男性 (文書厳重注意)札幌市教育委員会部長職(60代)男性 (口頭訓告)札幌市教育委員会課長職(50代)男性 (厳重注意)札幌市教育委員会課長職(50代)男性 ※役職は当時のもの そのうえで、秋元市長が教育長に対して、教育委員会全体として事件を重く受け止め、再発防止を尽くすように口頭厳重注意を行ったとした。