日産アリアと基礎を共有 クロスオーバーへ一変 ルノー・セニック Eテック
クロスオーバーには充分以上といえる鋭さ
ダッシュボードのデザインは、ルノー・オーストラルと似ている。中央に設えられた、12.0インチのタッチモニターが車載機能の多くを司るが、その下には独立したエアコンの操作パネルがある。実際に押せるハードボタンで、扱いやすい。 インフォテインメント・システムは、アップル・カープレイとアンドロイド・オートへ無線で対応。モニターの上部にはショートカット・メニューが常時表示され、アイコンも大きく、このクラスでは最高水準のシステムだと思う。 ステアリングコラムの右側から複数のレバーが伸びており、これは少し戸惑う部分。シフトセレクターとウインカー、オーディオ用のものが、それぞれ独立して飛び出ている。慣れるまでは、間違いそうだ。 確認はこのくらいにして、発進してみよう。試乗車が履いていたタイヤは、20インチのミシュラン・プライマシー。0-100km/h加速は8.4秒で、驚くほど速いわけではないものの、ファミリー・クロスオーバーには充分以上な鋭さがある。 アクセルペダルの操作に対して、リニアにパワーが生まれ、スルスルと速度が上昇。穏やかに傾ければ、滑らかで直感的に扱える。 マルチセンスと呼ばれる、ドライブモード・システムを実装。パーソナル、コンフォート、エコ、スポーツの4モードから選べ、ステアリングの重さやアクセルレスポンス、車内の間接照明の色などが変化する。
日常移動を心地良くこなせるクロスオーバー
ダンパーはアダプティブ仕様ではないものの、衝撃吸収性は良好。姿勢制御も適度に引き締まり、急激な旋回を求めると大きめのボディロールが生じるとはいえ、不安を感じるほどではない。全般的には、リラックスして長時間を過ごせる。 ステアリングホイールは、スポーツ・モードを選ばない限り軽め。反応は自然で、フロントタイヤのグリップ力も高い。 少し気になったのが、高速域での反応。切り始めの遊びを過ぎると、若干急に反応するように感じた。とはいえ、操る自信を大きく低めるほどではない。 回生ブレーキの効きは、3段階から選べる。発電しない完全な惰性走行も可能で、1番強くすると、ブレーキペダルを踏む必要性が大幅に減る。 かなり活発に運転すると、ブレーキの反応が若干安定しなくなるようではあったが、そんな場面は限定的。日常的な移動を心地良くこなせるだろう。 今回の試乗の限り、航続距離も褒められる。87kWhの駆動用バッテリーで、現実的に360kmから540km程度は走れるだろう。 エネルギー効率の良い、ヒートポンプ式エアコンが標準装備。急速充電能力は、DCで150kWまで。自宅の充電器として一般的なACでは、22kWまで対応する。 クロスオーバーへ一新したセニック。ライバルの多いカテゴリーながら、堅実な選択肢の1つに加えられるだろう。快適性や航続距離が他を凌駕するとはいえないが、車内の広さが生む実用性や上質なインテリアは、明確なストロングポイントになっている。
ルノー・セニック Eテック・ロングレンジ・アイコニック(欧州仕様)のスペック
英国価格:約4万3000ポンド(約795万円/予想) 全長:4470mm 全幅:1864mm 全高:1571mm 最高速度:169km/h 0-100km/h加速:8.4秒 航続距離:624km 電費:7.2km/kWh CO2排出量:- 車両重量:1850kg パワートレイン:AC永久磁石同期モーター バッテリー:87.0kWh(実容量) 急速充電能力:150kW(DC) 最高出力:218ps 最大トルク:30.4kg-m ギアボックス:1速リダクション(前輪駆動)
ヴィッキー・パロット(執筆) 中嶋健治(翻訳)