不発の森保J3バック挑戦は正解だったのか?
トリニダード・トバゴ戦で代表通算キャップ数が117に到達。川口能活と今回招集されているFW岡崎慎司(レスター・シティ)を抜いて単独歴代3位に浮上した長友は、カギを握るポジションを務めていることを認めたうえで「間違いなく強みになる」と、3バックへのチャレンジを歓迎する。 「僕たちもワールドカップのベルギー戦で、痛い思いをしましたからね。相手がすごく背の高い選手を入れてきたときに3バックにして、クロスを防ぐことができればまた違った結果になっていたかもしれない。もちろん『たられば』の話ですけど、たとえばアジアの最終予選も含めて相手がパワープレーに出てきたときとか、オプションをもっていることは強みになるとプレーしていて感じました」 忘れもしない昨年7月2日。ロシア大会の決勝トーナメント1回戦で強豪ベルギー代表から2点のリードを奪いながら、身長194cm体重85kgの巨漢MFマルアン・フェライニらが途中投入された後半20分を境に流れが一変。悪夢の逆転負けを喫し、悲願のベスト8への扉を閉ざされた。 新しい戦い方は、特に活動期間が限られる代表チームでは一朝一夕には身につかない。実際にピッチで戦っている選手たちが試行錯誤を繰り返しながら、時には選手間で何度も話し合った末に方向性をひとつひとつ確認していく。 たとえばトリニダード・トバゴ戦の前半などは、クロスを入れても相手ゴール前へ詰めたのがFW大迫勇也(ベルダー・ブレーメン)だけという状況が何度かあった。3バックに変えて前線の人数が少なくなっている以上は、ボランチやウイングバックの選手がリスクを冒してでも飛び込む必要がある。 キャプテンを務めたMF柴崎岳(ヘタフェCF)は後半40分、パスカットから大迫を追い抜いて相手ゴール前へダッシュ。GKに防がれたものの、あわやのシュートを放ったシーンに「どこかで2列目、3列目から相手のラインを崩すような動き出しが必要なときもある」と自らに言い聞かせた。 あるいは、トリニダード・トバゴ戦のように自陣に引かれれば、3バックの左右のどちらかが攻撃参加することも求められる。いずれにしても実際に戦い、ホームで勝利を得られなかったがゆえに手にすることができた課題でもある。森保監督も決して悲観的な表情を見せなかった。 「選手たちには難しい部分も多々あったと思うが、自分たちで確認しながらよくチャレンジしてくれたし、時間を追うごとに少しずつ感覚がよくなって、厚みのある攻撃につながった。選手たちが感覚的に覚えていってくれれば、またオプションとして使っていけると思う」 決定機をことごとく外し、ホームで勝てなかったという結果を、3バックの中央を務めた昌子源(トゥールーズFC)は「負けなくてよかったではなく、勝てなくて悔しかったと思うべき試合」と逃げることなく受け止めた。失敗は成功の母という故事を信じ、先に待つ正念場の戦いでプラスになる場面を思い描きながら、森保ジャパンはさらにチャレンジを追い求めていく。 (文責・藤江直人/スポーツライター)