【イベントレポート】ジブリパーク新エリア、宮崎吾朗は「ハウルの城」建設に苦労「図面に引けない」
スタジオジブリの世界が表現された公園・ジブリパークの新エリア「魔女の谷」が3月16日にオープン。本日2月28日に愛知の愛・地球博記念公園(モリコロパーク)で施設説明会が行われ、制作現場を指揮してきた宮崎吾朗と、愛知県知事の大村秀章が出席した。 【画像】宮崎吾朗が「図面に引けない」と語った「ハウルの城」 「魔女の谷」は「魔女の宅急便」「ハウルの動く城」「劇場版 アーヤと魔女」の世界をモチーフにした建物があるエリア。今回のオープンによってジブリパークのすべてのエリアがそろう。大村は「2005年の『愛・地球博』の理念がジブリパークに引き継がれている。ジブリ作品のコンセプトも未来永劫、生き続けていくと思っています。ぜひ世界中のジブリファンに楽しんでほしい」と述べた。 宮崎は「ようやくたどり着けた。愛知県の皆様や設計会社の皆様に感謝しています」とまず一言。そして「本当にお客様が楽しんでくれるかドキドキしています」と胸中を明かす。「魔女の谷」を構想した経緯について「一番最初に下見をしたときに候補地をいくつかご紹介いただいたんですけど、このエリアは周りを森と池に囲まれていて、いい雰囲気に感じました。これだけ囲われていると、外の世界と切り離された独自の空間を作れる」と回想。そして「『サツキとメイの家』が和風なので、対応する形で洋風にしました。ジブリ作品には“和風”の作品と“洋風”の作品があるので」「洋風の作品は魔法が登場したりとファンタジックなものが多い。であれば魔女をテーマにしてもいいのではと。構想の最初から『魔女の谷』の計画を考えていましたね」と語った。 同エリアには遊具やレストランなども立ち並ぶ。宮崎は「土地が奥で二股に分かれている場所なので、それぞれ『魔女の宅急便』『ハウルの動く城』と別の世界観を並置させようと思いました。中央にはパン屋やお菓子屋さんなどで街並みの再現をしたり。小さい村に遊園地みたいなものが来ていて楽しい空間になるというイメージでしたね。そうすると、飲食や物販施設などは自然と残った両側の細長い土地に作ることになりました」と思い返す。建物外に設置された植栽について話が及ぶと「建物だけ作ると片手落ちで、たとえば『魔女の宅急便』のお家は素敵なお庭も含めていますよね。背後にある森なども含めてランドスケープとして作ることが大事です」と言葉に力を込めた。 「魔女の家」では蛇口をひねると水が流れたり、暖炉で火をつけたりできる仕組みもあり、宮崎は「眺めるだけでなく、触れることや体験することって大事ですよね。住める機能を与えることで建物としても説得力が生まれるんです」と解説。独特な空間を持つ「ハウルの城」は建設に苦労したそうで、宮崎は「図面に引けない建物なんです。平面で見ても直角で交わっている部分が少ないし、下のほうは不思議な形をしている。コンピュータがあってよかったなと思いました」と笑う。そして「大きい建物になるんですが(装飾物の)1つひとつは手作り。足の関節みたいな部分も職人さんが手作業で形を作っている。アナログなんです」と明かした。 同エリアの構想期間と映画「アーヤと魔女」の制作期間が重なっていたことに司会者が触れると、宮崎は「どっちかにしとけばよかったですよね(笑)」と冗談を交えて返答。「『アーヤと魔女」』は3DCGでしたので、現場が始まってしまえば僕が直接手を下す部分がなくなる。なので隙を狙ってジブリパークの図面をチェックしたりしました」と振り返った。 3月からは5つのエリアすべてに入場可能なチケット・ジブリパーク大さんぽ券などが登場。宮崎は「1日で5エリア回れるのかしら……」と気にしつつ、「ぜひ1つひとつ楽しんでほしい。公園を散歩するように楽しめるチケットなので、気軽に使ってほしいですね」と声を弾ませる。最後に「公園があってのジブリパークなので、やがては“ジブリパークあっての公園”になるようにしたい」と願いを込め、「『サツキとメイの家』は愛知万博のときに建てたのでもう20年になる。これからの20年もあっという間だと思えるようにしたいですね」と真摯に伝えた。 なお映画ナタリーでは追って内覧会の模様をレポートする。 (c)Studio Ghibli