PTA解散「保護者の会」に 親も子も楽しい活動を 静岡県東部の公立小
少子化や共働きの増加を背景に、在り方が問われるPTA。静岡県東部のある公立小がPTAを解散し、できる人ができることをする組織「保護者の会」に本年度から生まれ変わった。全国では近年、PTA解散が話題となるが、県内では学校の統廃合以外での解散は珍しい。 ■“やらされ感”なく前向き このPTAでは数年前から、役員のなり手不足が課題となっていた。深刻だったのが正副会長の選出。わが子の学校行事だけでなく、他校の保護者との交流や研修、さらにはPTA会長が「充て職」で任命される地域団体の会議や催しにも出席を求められ、負担を訴える声が強かった。元PTA会長で、現在は同会代表の会社員男性(39)は「平日の行事も多く、会社勤めの人には厳しいスケジュールだった」と振り返る。 2022年度には臨時総会で、役員選出のくじ引き廃止と組織のスリム化を決定。23年度にはPTA解散とそれに代わる保護者の会の発足が承認され、本年度から新体制となった。保護者の会は、加入の意思を全保護者に確認し、全員が会員となった。役は代表、会計、会計監査の3役のみでいずれも手上げ制。従来の活動も見直した。地域組織の見守り体制が強固なため、登校時の旗振り当番は廃止。広報は希望者が必要な時にアプリで配信する形に変え、印刷の代金や手間を省いた。 学校外の活動参加も減った。PTAとは別に、行政などから学校代表者の参加を要請される交通や健全育成などの活動のみ、同会有志が参加することにした。 本年度実施したのは、夏前の学校の冷房などの清掃だけ。これまでの当番制から希望制に変え、ゲームと組み合わせ児童も参加可能としたところ約50人が集まった。 活動内容や会費など、同会の在り方はまだ手探りだ。それでも、代表の男性は「“やらされ感”がなくなり、わが子の学校をよくする活動に専念できるようになった。悪い方向には行っていない」と前を向く。星空観賞や科学ショーなど、現在は親も子も楽しめる行事を構想している。 他校での勤務経験もある同小校長は「行政への要望など、これまで多くの場面でPTAの力を感じてきた」と明かす。解散は予想外だったが、近年のなり手不足を見て「既に活動が持続可能でなく、やむを得ないと思った」。年間回数が2桁に上った活動参加がなくなり、担当教諭の負担軽減も実感しているという。 校長は「個人的な見解」として保護者組織の必要性を指摘し、言葉を加えた。「この学校の保護者は前例踏襲でなく、良いものを作っていこうという気持ちが強い。PTA解散は、ここだからこそできたこと」 県PTA連絡協議会によると、県内公立小中のPTA解散はごくわずかにとどまり、ほとんどの学校では活動を継続しているという。
静岡新聞社