日本、フィリピンとの円滑化協定署名、共同訓練拡充 米豪とも連携、中国に対抗
日本、フィリピン両政府は8日、自衛隊とフィリピン軍の相互往来を容易にする「円滑化協定(RAA)」に署名した。協定が発効すれば、自衛隊とフィリピン軍による共同訓練の幅が広がり、防衛協力の強化が見込まれる。南シナ海では領有権を巡り中国とフィリピンの摩擦が激化している。日本は米国、豪州とも連携を強め、軍事的威圧を強める中国に対抗する構えだ。 ■「災害」共同訓練を実戦的に拡充も 日本はこれまでオーストラリア、英国とRAAを結んでいる。日英RAAが初適用された昨年11月に日本で実施した陸上自衛隊と英国陸軍による共同訓練には、英陸軍から過去最大規模の約200人が参加した。RAAにより、入国審査やビザ(査証)の申請が不要となるなど手続きが簡素化されたためだ。 日比間ではこれまで、海自や空自を中心に2国間や米国などを加えた多国間の共同訓練を実施している。RAAの締結により現在、災害救援の名目で実施している陸自とフィリピン海兵隊などとの共同訓練も今後、より実戦的に拡充される可能性がある。自衛隊関係者は「陸自と米比の海兵隊が南シナ海の離島で堂々と訓練を実施できるようになれば中国への強いメッセージになる」と話す。 ■海上交通路の要衝、比と協力深化 フィリピンは日本と同じ米国の同盟国で、シーレーン(海上交通路)の要衝を占めるなど、戦略的に重要な地域に位置する。このため日本は、平成26年に武器禁輸政策を転換して以降、初めての完成品の防衛装備移転として、比空軍に警戒管制レーダーを輸出するなどフィリピンとの防衛協力を深めてきている。 同時に日米豪比4カ国は中国を念頭に連携を強化している。5月に米ハワイで開催された4カ国防衛相会談では、南シナ海での中国によるフィリピン船への度重なる妨害に深刻な懸念を表明。力による一方的な現状変更や緊張を高める行為に反対し、4カ国の結束を確認した。 4月には、南シナ海で初めて「海上協同活動」と位置付けた4カ国による共同訓練を実施。6月にもオーストラリアの代わりにカナダを入れた4カ国による海上協同活動を行うなど、多国間の枠組みによる中国への牽制を強めている。 自衛隊幹部は、インド太平洋地域の安全保障について「日米豪が中心となって中国からフィリピンを守ることができるかが、大きなポイントになる」との見方を示す。(小沢慶太)