【地方創生】挑戦へ決意新たに(1月1日)
地方の人口減や少子化に歯止めがかからない中で、2025(令和7)年は開けた。政府は新たな創生本部を発足させた。県は次期総合戦略の策定を進めている。地方創生が始動しての10年に手詰まり感は拭えない。打開の鍵は挑戦にあるとの決意を胸に、この一年を歩んでいきたい。 創生本部は、2014(平成26)年来の施策の総括で、「東京一極集中を変えるに至らず、若者や女性が地方を離れる動きが加速した」と指摘した。その上で、若者や女性にも選ばれる「楽しい地方」を目指す。移住や企業の移転、デジタル新技術による生活改善、農林水産品や観光資源の高付加価値化による経済活性化も進める。自治体への交付金は倍増させるとした。 東京圏の転入超過を解消する政府の目標は2度も先送りされ、現在は2027年度とされている。現行政策を並べるだけで、岩盤化した社会構造を転換できないのは明らかだろう。加えて、新たに掲げた「楽しい地方」とは一体何か。聞こえの軽いうたいに、地方の現下の苦心との落差を感じずにはいられない。政府は、まずは従来施策をしっかりと検証し、国策として取り組む姿勢を強めるべきだ。
県の次期戦略は、2025年度から6年間で復興・再生と地方創生を両輪で進める。少子化を含む各地の施策に対し、横並びの事業で人流を奪い合い、成果は不十分との指摘は教訓として示唆に富む。 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故が発生した直後、被災町村の合併が中央で取り沙汰された記憶がある。被災地は屈せず、発災前より豊かな郷土づくりに挑んだ経験知は、本県固有と言っていい。全住民避難による人口急減から再起を期す被災地は、地方が抱える課題解決の先進地とされた。本県には「挑戦」の合言葉がふさわしい。県、市町村、地域社会が一体となって新たな県づくりを前進させる力に高めたい。 能登半島地震発生から1年を経ても、復旧復興は多難なままだ。災害関連死が続く現実が痛ましい。国は防災庁を設けて国内対策を強化するとしている。地方の強じん化は安全で持続可能な国土づくりに不可欠だ。創生の基盤でもある。本県を含む被災地の課題を見据えた体制整備が求められる。(五十嵐稔)