「日本人にしか備わっていない」資質とは? ドリブル伝道師の実体験「海外の選手は意外とできない」【インタビュー】
日本人選手は「再現性高く認識できる」
三笘の強みに言及しつつ、日本人ならではの武器について語っている。 「国内外の多くの選手に指導するなかで、細部まで考えるというのは日本人選手の良さであり、海外の選手は意外とできないと感じている。僕自身が実感しているが、日本人に近いアジア人でも、背後から人がやってきてぶつかってしまうかも、という状況でスッと避けることだったり、お互い真向かいから歩いてきたら、スムーズに譲り合ったりとかができない。日本人にしか備わっていないものもあるし、ちょっとした変化にも気づくことができる。例えば、わずかな重心の移行を海外の選手は感覚値で捉えるが、日本人は再現性高く認識できる」 岡部氏は現在、スペインに在住しているが、日常生活でも感性の差を思い知っている。「スーパーの駐車場でも、T字路で『出口は右側』と記載されていて、曲がって進み、またT字に突き当たった際、そこに出口の案内が掲示されていないと、スペイン人は『え?右か左、どっちなんだ?』と全く分からなくなる人が多い。日本人は、次は左と感覚的に分かる人が多いと思う」。最初にあった「出口は右側」の案内で、駐車場の全体像をある程度頭の中で描くことのできる日本人は、確かに多いだろう。ピッチにおいても、同じようなことが言える。 「ただ敵陣で横パスを出すワンプレーだけにしても、それによってセンターバックが数メートルだけ前に出て、サイドバックとの最終ラインにわずかながら溝が生まれる。そのスペースを順序立てて導き出せる」 岡部氏は、海外の一流選手と互角に渡り合うだけの資質が、日本人選手に備わっていると確信している。すべての指揮官がペップ・グアルディオラ監督のように細部まで戦術を徹底的にチームに落とし込むわけではない。そのような世界で、説明書に書かれていないことを自分で考えて紐解く力は、日本人ドリブラーの活路になるのは確かだろう。 [プロフィール] 岡部将和(おかべ・まさかず)/1983年8月1日生まれ、神奈川県出身。PREDATOR URAYASU FC SEGUNDO―バルドラール浦安―Laguna Playas de Salou(スペイン)―湘南ベルマーレ。2015年からドリブルデザイナーとしての活動を開始し、多くのプロ選手や子供たちにドリブルの指導を行う。YouTubeなどのSNSを通じて配信した動画の総再生回数は3億回を超える。
城福達也 / Tatsuya Jofuku