東京都で急増「アライグマ」に”接近要注意”のワケ…農作物への被害、死に至る感染症の媒介も
ペットへの感染リスクも
人間であれば触れず、近づかないよう警戒することで、ある程度感染も防げる。だが、ペットへの病原菌感染リスクもあり、例えばジステンパーやパルボウイルス感染症などを媒介する。そのため、近隣で目撃情報などがあった時点で、ペットを飼っている場合は十分に警戒する必要がある。 こうした被害をもたらすことから特定外来生物に指定されているアライグマは、「外来生物法」によって輸入、放出、飼育等が禁止されるなど、厳しい規制がかけられている。また、被害が生じる恐れがある場合でも必要と判断されれば、防除が許されている。それでもなお強い繁殖力などもあり、個体数は増え続け、都も年々その対策を強化しているのが実状だ。
対策強化で捕獲数も年々増加
東京都が策定する「アライグマ・ハクビシンの防除実施計画」に参加している自治体は22区22市2町で計46区市町まで拡大。区部に限れば千代田区以外、全区が参加しており、もはや東京都ほぼ全域にアライグマが入り込んでいるといえる。 捕獲状況は2022年に1282頭(ハクビシン、アライグマ)が捕獲され、そのうち110頭が区部での防除捕獲だった。これら防除実施計画に参加する区のひとつである足立区の担当者に取り組み状況を聞いた。同区では、2018年よりハクビシン・アライグマを、捕獲器(箱わな)を設置して捕獲する事業を実施しているという。 「昨年より、対策を拡充しました。それまでは捕獲器の設置は屋外のみでしたが、屋根裏や床下などへ侵入するケースも多く、屋内への設置も可能としました。利用回数も年度内2回までの制限がありましたが、制限をなくしました。何度でも利用可能です。また、屋内への侵入を防ぐ家屋の穴の閉塞作業にも助成金をだすことになりました」と足立保健所生活衛生課庶務係の担当者は説明した。 屋外にわなを設置しても、アライグマやハクビシンは家屋の屋根裏や床下を棲みかとするため、繁殖の抑止にはつながりづらいという。それにしても、ワナの設置を屋内にまで拡充し、利用回数の制限をなくすというのは、アライグマ等の繁殖力がすさまじく、街中への侵入がいかに深刻かを物語っている。 同区での捕獲器設置数は年々増加し、昨年度は117件で前年の56件から倍以上になった。それに伴い、アライグマの捕獲数も急増している。 2021年度が7頭、2022年度は9頭だったのが、昨年度は一気に33頭に増大。区内の荒川周辺でも目撃情報が増えているといい、特にアライグマの繁殖が加速していることが各データなどからも鮮明になっている。