大谷は三回、バットを折りながらもセンター前へ運んだ（AP）

【サンディエゴ（米カリフォルニア州）8日（日本時間9日）】米大リーグ、ポストシーズン（PS）はナ・リーグの地区シリーズ（5回戦制）第3戦が行われ、ドジャースはパドレスに5―6で競り負けて1勝2敗となり、崖っぷちに立たされた。大谷翔平投手（30）は「1番・DH」で出場し、4打数1安打。9日（日本時間10日午前10時8分開始）の第4戦に向けて「後がないという感覚自体が今の僕にはない。必ず連勝できる」と前向きな姿勢を貫いた。 【写真】ドジャース・大谷翔平が語った「2連勝すればいい」の心構えにロバーツ監督「正しい考え方」 後ずさりすれば崖下に落ちる。もう負けられない。ドジャースはパドレスに惜敗し、1勝2敗で王手をかけられた。敵地の熱気を肌で受け、額に汗を浮かべたまま取材対応した大谷は、前だけを向いていた。 「2連勝すればいいゲームだと思っている。ここまでの1勝2敗は別に考える必要はない。後がないという感覚自体が今の僕にはない。流れを持ってこられれば、必ず連勝できる」 まさに明鏡止水。試合終了わずか20分後だったが、こう言い残してキャップを後ろ向きにかぶりバスに乗り込んだ。 ペトコ・パーク史上最多4万7744人の観衆が埋めた一戦。ドジャースタジアムで一部ファンがゴミをグラウンドに投げ込んだこともあり、警備が増員され厳戒態勢が敷かれた。ド軍にとっては完全アウェーとなり、試合前から「BEAT LA（ドジャースを倒せ）」のコールが鳴りやまなかった。 ド軍は一回にベッツのソロで先制したが、二回無死一塁で一ゴロを処理したフリーマンの二塁送球が、内寄りに走路を取った一走・マチャドのヘルメットを直撃。第2戦にド軍ベンチに向かってボールを投げ、騒動となった因縁の相手の頭脳プレーをきっかけに一挙6失点し、劣勢に立たされた。 大谷も意地は見せた。三回無死一塁。バットを折りながらも中前打を放ち、T・ヘルナンデスの満塁本塁打で1点差に迫った。五回は先発キングのスライダーを仕留め、中堅深くに運んだがフェンス際で失速。飛距離385フィート（約117・3メートル）とドジャースタジアムを含む4球場では柵越えの打球だったが、中堅手のグラブに収まった。八回は救援左腕スコットのスライダーに見逃し三振。第2戦に続いてパドレスの左の切り札に三振で屈し、短期決戦の厳しさも味わった。 満身創痍（そうい）のナインもファイティングポーズを崩していない。右足首に不安を抱えるフリーマンは八回に中前打。患部の状態を懸念して代走が送られたが「試合前は出場するために治療に専念した。また同じことをするだけ」。左内転筋の負傷を抱える遊撃手ロハスは三回に中前打。三進した際に患部に違和感を覚え、ロバーツ監督に交代を指示されると悔しさをあらわにした。

昨春のワールド・ベースボール・クラシック（WBC）では準決勝のメキシコ戦で、1点を追う九回に先頭で二塁打。塁上で感情を爆発させてナインを奮い立たせ、逆転サヨナラ勝利を呼び込んだ。この崖っぷちでも大谷は頼もしい言葉を残した。「（自身の）状態自体はいい。（打線は）劣勢から追い上げたし、自信を持っていい」。その表情には一点の曇りもない。ワールドシリーズ制覇を使命にドジャースへ加入した大谷。この正念場で類いまれな勝負強さを発揮する。（横山尚杜）