盆栽と宇宙の融合!? 美術館を自分色に染めるライトアップ - パナソニックの街演出クラウド「YOI-en」
夜間のライトアップは観光の目玉。クリスマスや年末にもなると、テーマパークや大型商業施設などがこぞって美しいライティングを始めて目を楽しませてくれます。施設のライトアップ向けに導入が進んでいる設備に、パナソニック エレクトリックワークス社(以下、パナソニックEW)の街演出クラウド「YOI-en(ヨイエン)」があります。 【写真】 闇夜に浮かび上がる盆栽。印影が強調され、昼の盆栽とは違った美しさがあります YOI-enは華やかなライティングを演出するだけでなく、施設を訪れた人が照明の演出に参加する「体験型」の照明演出まで可能にしてくれます。現在、埼玉県さいたま市大宮区の盆栽美術館にて、YOI-enを使った夜間ライトアップイベント「THE BONSAI Microcosm Journey」を開催中。そこで、あまりなじみのない「盆栽のライトアップ演出」を体験してきました。 「街演出クラウド」ならではの照明演出 まずYOI-enとは、「街演出クラウド」と呼ばれるネットワークを介した照明演出システムのこと。演出システムをネットワーク上に構築することで、遠隔操作や広域演出、さらには東京と大阪といった多拠点をシンクロした演出も可能。アイデアしだいでいろいろな照明演出ができるという興味深いシステムです。 「THE BONSAI Microcosm Journey」の開催期間は、2023年12月10日までの金・土・日・祝日限定。土曜日は17:00~20:00、金曜日・日曜日は17:00~19:00です。11月23日は17:00~19:00。入場料は通常時と同じ一般310円となります。 「Microcosm Journey」というイベント名にあるとおり、今回は日本文化の盆栽に「宇宙の旅」というテーマを掛け合わせた演出をYOI-enで実現しています。 照明演出は大きく「全体演出」と「個別演出」の2つ。全体演出は、ライトアップ会場でもある盆栽庭園全体のライトアップです。「春」「夏」「秋」「冬」「宇宙」「電球色」という6つのテーマにあわせて、ライトアップを90秒ごとに切り替えます。 また、入場者が全体演出に「割り込む」というYOI-enらしい演出も。館内にあるQRコードをスマホのカメラで読み取って、そこから表示されるWebページで自分の誕生日を入力すると、20秒間だけ庭園全体がパーソナルカラーに染まります。「施設の照明を自分の手で変化させる」というのは、日常ではなかなかできない体験ですね。 照明、プロジェクター、音響を組み合わせた「小宇宙」を感じる演出も もうひとつ、盆栽そのものをフィーチャーした「個別演出」もあります。個別演出では、プロジェクターによって盆栽の上を星が瞬くようなプロジェクションマッピングを行い、盆栽そのものが宇宙空間であるような表現が体験できます。 個別演出にも体験コンテンツが用意されています。盆栽前のQRコードを読み込み、誕生日を入力することで「惑星占い」がスタート。現れた惑星にあわせた光と音の演出が盆栽の上で踊るのです。惑星の演出は「水星」や「太陽」などの全8種類あります。 さいたま市盆栽美術館の学芸員によると、盆栽というのは鉢の中の世界を自然の風景に「見立てる」もの。つまり、鉢の中にある木を「山に植わっている大木」に見立てて鑑賞します。全体を俯瞰したあとに盆栽を下側から仰ぐように鑑賞することで、木の下に立っているような感覚を味わえるそうです。 今回のプロジェクトマッピングは、下から見上げると美しくなるように構築されているため、見る人が自然と「しゃがんで鑑賞する」ように調整しているとのこと。「盆栽はしゃがんだ位置からも鑑賞しましょう」と説明せずに、演出によって自然な誘導ができるのはなかなかスマートではないでしょうか。なお、今回の「照明による誘導」はこの個別演出だけでしたが、YOI-enではもっと広域に人の流れや目線を誘導するような照明も構築できます。 YOI-enはまだスタートをして間もないため、そこまで導入事例は多くありません。照明をクラウドにつなげることで可能なエンターテインメントは、まだまだ可能性にあふれているはず。今後は導入事例が増えることで、これまでなかったようなYOI-enによる新しい照明演出が広まっていきそうです。 今回の「THE BONSAI Microcosm Journey」も、全体演出と個別演出というシンプルな構成ながら、盆栽という日本の伝統と、クラウド照明コントロールという先端技術を融合。照明による演出を加えることで、盆栽にそこまで興味がなかった筆者もワクワクしながら盆栽を楽しみました。 倉本春 くらもとはる 生活家電や美容家電、IoTガジェットなど、生活を便利にする製品が大好きな家電ライター。家電などを活用して、いかに生活の質をあげつつ、家事の手間をなくすかを研究するのが現在最大のテーマ。
倉本春