自分が「老害」の加害者になっていた…放送作家「鈴木おさむ」引退のきっかけは「吉田豪」?(レビュー)
鈴木おさむが、放送作家業からの引退を発表した。自分がソフトな老害の側になりつつあることに気付いたのが原因のひとつらしいんだが、へー、そうなんだと呑気に彼の新刊『仕事の辞め方』を読んでいたら、衝撃の記述が飛び出したのである。 「事の始まりは、とあるYouTubeチャンネル。『街録ch』という人気チャンネルをご存じでしょうか? /三谷三四郎というテレビディレクターが町中で、とんでもない人生を経験した人たちにインタビューするもので、これがとてつもなくおもしろい。/三谷Dは、元々お昼の番組『笑っていいとも!』のADさんで、そのあとディレクターになり、僕もいくつか番組を一緒にやっていたことがある。/三谷Dが、テレビから少し離れて、『街録ch』を始めてヒットし始めたときに、嬉しくて電話した。『良かったな、三谷』と言っても、なんかノリが悪い」 その理由が、「ライターの吉田豪さんに三谷が逆インタビューされている『街録ch』の映像」によって判明する。番組で自分たちが立てた企画をあとから引っくり返す「鈴木おさむを逆恨み」していたからだった。それまで自分は上の人たちに後から企画を引っくり返される、老害の被害者側だと思っていたが、加害者側になっていたことにボクのインタビューがきっかけで気付いたのである。 ちなみにこの動画、三谷Dが「だから僕、鈴木おさむさんのこともめちゃくちゃ嫌いだったんですけど、それももうやめようかなと思って」と反省していたので、2人はこれをきっかけに和解。鈴木おさむのラジオに三谷Dがゲストで呼ばれたりの展開になるんだが、そのとき鈴木おさむは「鈴木おさむ的なものにイラッとくるのはわかるんですよ」というボクの発言にむしろ怒りをぶつけていたので、もしかしたら今回の引退のトリガーを引いたのはボクなんじゃないかって気すらしてきたのである。なんかいろいろすいません! [レビュアー]吉田豪(プロ書評家、プロインタビュアー、ライター) 1970年、東京都出身。プロ書評家、プロインタビュアー、ライター。徹底した事前調査をもとにしたインタビューに定評があり、『男気万字固め』、『人間コク宝』シリーズ、『サブカル・スーパースター鬱伝』『吉田豪の喋る!! 道場破り プロレスラーガチンコインタビュー集』などインタビュー集を多数手がけている。また、近著で初の実用(? )新書『聞き出す力』も大きな話題を呼んでいる。 協力:新潮社 新潮社 週刊新潮 Book Bang編集部 新潮社
新潮社