漫才に農業「6足のわらじ」 笑い飯・哲夫さん、なぜしめ縄作り?
漫才コンビ・笑い飯の哲夫さんと正月飾り「しめ縄」を作るイベントが11月下旬、大阪市西区の府立江之子島文化芸術創造センターであった。奈良県出身の哲夫さんは実家の田んぼで稲作に取り組み、材料は哲夫さんが育てた米の稲わらだ。お笑い芸人だけでなく農業など「6足のわらじ」で活躍する哲夫さんがしめ縄作りに込める思いとは――。 漫才が始まるのかと思うほど、ピシッと整ったスーツ姿でやって来た哲夫さん。ホワイトボードに稲やしめ縄を描き、図解から始まった。「年神(としがみ)様の結界を張るしめ縄、その年神様の魂が宿った鏡餅を分け与える。これがお年玉の由来です」「作物の成長には窒素が必要で、雷の放電によって空気中の窒素と酸素が結びつき、雨とともに稲の栄養になる。これが稲妻です」。さすが漫才師、軽快な口調でわかりやすく参加者の「へぇー」が連発だ。 「僕がじいちゃんに教えてもらったやり方で作っていきますよー」。針金で縛ったわらの束を3本に分ける。それぞれねじって2本をより合わせてから、残る1本を巻き付ける。気づけば、ジャケットを脱いだ哲夫さんの足元はわらまみれ。「哲夫さーん、これ合ってます?」と参加者の呼びかけに次々と駆けつける。額に汗をにじませ、作業の合間には「稲刈りは右手で鎌を持つなら、左手は親指を上にして稲をつかむのが安全で正しいとされているんです」「テレビで農業体験するアイドルが親指を下にしてるの、めっちゃ気になるんですわ!」と、農家の顔を見せた。 なぜ、しめ縄作りを始めたのか。お笑い芸人を軸に、好きな仏教や花火に関すること、農業や学習塾経営と「仕事の幅が増えて『5足のわらじ』になって。わらじと言うからには偶数がええなと、わらじやしめ縄作りを入れて6足のわらじになりました」と笑う。その上で「やっぱり大切にしたいのは『継承』です。米作りやしめ縄に込められた意味とか、時代が変わっても先人が紡いできたことを絶やしたくないですから」。日本の伝統文化を大切にしたい哲夫さんの思いが込められた、温かい雰囲気のしめ縄作りだった。【前本麻有】