『虎に翼』『新宿野戦病院』『嘘解きレトリック』 “癖の強い役”で真価を発揮する余貴美子
余貴美子、『虎に翼』星百合役で見せた圧巻のパフォーマンス
連続テレビ小説『半分、青い。』(2018年度前期)以来、4度目の朝ドラ出演となったのが『虎に翼』だ。余が演じた星百合は、星航一(岡田将生)の継母で、初代最高裁長官・星朋彦(平田満)の再婚相手として、夫の亡きあとも星家を守っているという、いわば星家の大黒柱のような存在である。『半分、青い。』で演じた岡田貴美香は肝っ玉かあさん的な雰囲気があったが、本作では穏やかで娘思いな母親。当初出演者情報が解禁されたときには余にしては普通の役が来たなと思っていたのだが、それは大きな間違いだった。 物語の途中で物忘れの症状が悪化していく百合。優未(毎田暖乃)からご飯を炊くのを忘れていることを指摘された際には、「それは優未ちゃんがやるって言ってたじゃない」とキツく当たったり、夕食用に作ったシチューを「腐っている」と思い込んで捨てたりと、次第に物腰柔らかな性格は身を潜め、表情に刺々しさのようなものが表出してくる余の変化がとても印象的だった。人間の感情の変化をここまで鮮明にそして立体的に演じられるのは、余が積み上げてきた経験にほかならない。同作での余の生き様は決して忘れることはないだろう。 さて、そんな余が再びドラマに帰ってくる。『嘘解きレトリック』第9話のあらすじは、左右馬(鈴鹿央士)と鹿乃子(松本穂香)のもとに、江戸時代から代々続く大きなお屋敷に住む実原家の老婦人・久から、ひとり娘・依里が残した本当の孫を見極めてほしいという依頼が舞い込んでくる、というもの。 余が演じるのは、実原家に一人で住む実原久。場面写真から察するに今回もただの老婦人ではないようだが、監督の河毛俊作とは『新宿野戦病院』以来のタッグなだけに、今回も余の引き出しを増やしてくれるのではないかと期待している。余が本作にどのようなアクセントを加えてくれるのか、非常に楽しみだ。
川崎龍也