朽ちる古里で13年ぶりに響いた太鼓の音 「またつながれる」育ててくれた祖父へ恩返しの踊り #知り続ける
踊って祖父とつながる
練習会は10月上旬から計3回、いわき市であった。実家の近所だった約10人が集まった。動画などで動きを確認し、1日3回は通しで合わせた。じゃんがらを踊るのは約20年ぶりだったが、リズムや振り付けは体が覚えていた。 奉納の日、白地に紺柄の衣装姿で、再建されて間もない神社の境内で踊った。太鼓やかねの音が響く中、約100メートル先に実家が見えた。祖父へ届けとばかりに、太鼓をたたく手に自然と力が入った。 翌日、学さんの墓を訪れた。おけの水を手に含み、墓石を優しくなでる。「実家を見てきたよ。あの時から全然変わっていないよ」 じゃんがらを奉納する前に12年半ぶりに立ち寄った実家はあの日のままで、地震で倒れた石塀も残っていた。帰還がかなわない現実に変わりはない。 それでも、復活したじゃんがらが森田さんと祖父、そして古里を結びつけてくれると思えた。祖父から引き継いだじゃんがらを踊るために、古里に戻ってくればよい。 「私も誰かにじゃんがらを伝えていかなければならない。70歳になっても体が動く限りは私自身も踊る。それが祖父とまたつながれる瞬間だと思う」【毎日新聞・肥沼直寛】
※この記事は毎日新聞とYahoo!ニュースによる共同連携企画です。