オランダに見る新しい図書館の役割 子供のプログラミング教室から高齢者のデジタルサポートまで
メーカーズクラブ:7~13歳の子供たちを対象に、毎週金・土の決まった時間帯に開催される理系ワークショップ。子供たちは専門家のサポートの下で、3Dプリンターやレーザーカッター、はんだ付け装置など、本格的な機器を使って工作したり、プログラミングを学んだりする。 授乳カフェ:赤ちゃん連れの母親に向けたコミュニティ活動。授乳や離乳食に関して専門家のアドバイスを受けられるほか、母親同士がお茶を飲みながら交流する場となっている。毎回40~50人が集まるという。 言語カフェ:外国人がオランダ語の会話練習をする場。毎週木曜の10時半~12時ごろまで開催され、オランダ人ボランティアが20人ほど協力している。10年ほど前、主にオランダに移住してくる難民向けに始まったが、現在はオランダで働くために移住してきた知的労働者とその家族が8~9割を占めるという。 コロナ禍ではオンラインでも実施され、2日間で300人が登録するほど人気を博した。オランダ人ボランティアが足りなくなったので、地元の大企業ASML(世界最大の半導体装置メーカー)の協力を仰ぎ、ボランティアを確保した。コロナ後もオンラインでの実施を継続し、平日の日中に図書館で参加できない人60~70人が参加している。
20カ国語の児童書を設置、アイントホーフェン市の国際化に対応
言語カフェの盛況に見られるように、近年のアイントホーフェン市は外国人の流入が激しい。同市はオランダでも屈指のハイテク企業が集積している地域にあり、世界中から技術系の人材が採用されていることが背景にある。特に昨今の半導体装置需要の拡大を受け、前述のASMLの成長は著しく、同社がアイントホーフェン市の国際化を一気に促している。
この変化に対応し、アイントホーフェン図書館では現在、日本語を含む20カ国語の児童書約7,000冊が備えられている。 「昔は子供たちが親と一緒にオランダに移住してきたら、家庭でもオランダ語を話さなければならないという考えが一般的でしたが、今は継承語(外国に移住した後も家庭で話される言葉)にアクセスできることが子どもの発育や脳にいい影響を及ぼすことが分かっています」(ウェイウェルさん) 多言語の児童書導入については、継承語教育の重要性を啓蒙し、同教育のネットワークを形成している市内の組織「継承語教育(HLE)ネットワーク」の働きかけがきっかけとなった。書籍の収集も同ネットワークや英語書籍の私設図書館「リーディング・ピア」の協力を得ている。