消費者マインド悪化 消費増税なら景気は落ち込むのか?
5月31日に内閣府から発表された5月の消費者態度指数は39.4となり、4月から1.0ポイント悪化しました。事前予想では新元号のお祝いムードなどから小幅な持ち直しが見込まれていましたが、結果は2015年1月以来の低水準で、トレンド(36か月平均)からのカイ離も大幅に拡大しました。トレンドからのカイ離拡大は、消費者が肌で感じる景況感が急速に悪化していることを意味します。(第一生命経済研究所・主任エコノミスト・藤代宏一) 【写真】プラス成長もGDPの中身は要注意 否定できない3度目の消費増税延期
前回は増税半年前から消費マインド低下
5月の悪化は、調査のタイミング(5月分は15日時点)との兼ね合いで、調査回答者の“消費疲れ”が弱さを誇張した可能性も考えられますが、悪化の本質的な背景は、10月に控えている消費増税でしょう。今回は、幼児教育無償化の実施やキャッシュレス決済のポイント還元などの経済対策によって、消費増税のマクロ的インパクトはある程度、相殺されるはずですから、前回対比で悪影響はさほど大きくならないと期待されます。 しかしながら、前回2014年4月の消費増税時に、消費者態度指数が増税の半年くらい前から低下し、その後、増税直後さらに著しく低下した経緯を踏まえると、現時点で既にかなり冷え込んでいる消費者マインドが一段と悪化するリスクがあります。 また関連統計の景気ウォッチャー調査も弱めの動きとなっています。この指標は消費者に近い立場でビジネスを展開する事業者に対するアンケート調査で「街角景気」という名称でも知られており、人々が体感する景気を忠実に再現してくれます。こうした消費者マインドを映し出す指標が悪化していることは、GDP(国内総生産)の約6割を占める個人消費が低調に推移する可能性を示唆しており、非常に不気味です。
消費者態度指数と個人消費には一定の連動性
現在の景気を一言で表現すると「マインド不況」という言葉が適切に思えます。現時点で消費が大きく減少しているわけではないのですが、上述の通りマインド指標は大幅に悪化しており、消費者の先行き不安感を浮き彫りにしています。マインド指標が悪化したところで、実際の消費が堅調であれば問題はないのですが、過去、消費者態度指数と個人消費(消費総合指数)に一定の連動性があることを踏まえると、やはり先行きは注意が必要でしょう。
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