本物か偽物か?なぜ那須川天心は前WBO世界王者モロニーとの危険な戦いを選んだのか…「辰吉vs薬師寺戦」の流れに重なる武居由樹とのビッグマッチへの最終テスト
しかも、このマッチメイクには次へのメッセージが込められている。 天心が2025年のターゲットとする武居戦への布石だ。武居が12ラウンドかかった相手に天心がどんな試合をするかは、間接的に「天心か武居かどちらが強いか?」の比較になる。 2人の試合内容と結果が比較されることは重々承知。 「(武居戦を)超えるという気持ちはあまりない。ただ客観的に見て比べられる。そこを物差しで測られるが、超えるというより、実力を全部出して圧倒的な戦いをしたい。もちろんKOしたい。流れでチャンスがあれば、いつでも狙える準備をしている」 それが理想。だが一方で本音も出た。 「KO決着は意識していない。ファンは比べたがるが、それより対モロニーに向き合っている。他人の評価はどうでもいい」 敵は武居でも世間でもなくモロニーなのだ。 ただノンタイトル戦ではあるが負けた場合のリスクもある。 「負ければ世界戦は遠のくでしょうね」 そして「やる前から負ける話をするバカはいない」とフフフと笑った。 筆者は、このマッチメイクを耳にしたとき、30年前の伝説の戦いを思い浮かべた。“レジェンド”である元WBC世界バンタム級王者の辰吉丈一郎が、薬師寺保栄との世紀の統一戦を戦う際に暫定王座決定戦としてホセフィノ・スアレス(メキシコ)と戦った。スアレスは、正規王者の薬師寺が初防衛戦で下した相手だった。薬師寺が10回で倒した相手を辰吉は3回で倒して「辰吉が薬師寺より強い」とのファンの待望論を盛り上げ、当時、網膜裂孔の既往症があったため、日本のリングに上がれなかった辰吉が、JBCに特例を認められ、薬師寺との世紀の一戦が実現した。天心―モロニー戦の流れは、語り継がれる世紀の一戦の実現プロセスに重なるのだ。 その武居は、右肩を痛め来年の1月24日に行う予定だった防衛戦が延期になった。モロニー戦の後にもう1試合前哨戦を挟み、2025年の秋にも天心―武居戦を実現させるという青写真への狂いはないのか。天心は「とくに変わることはない」と言い、「どこのベルトに挑戦するかはハッキリしていない。怪我しちゃいましたが、いつか必ず運命ならやると思う。ゆっくりやっていこうと思っている」とぶれなかった。 会見では比嘉大吾との屈指の好カードを組まれた堤が「WBAのランキングから見て(天心は2位)那須川君かなと思っていた」と天心の名前を出す場面があった。 もう天心はいつ世界挑戦してもおかしくないボクサーとして認知されている証拠でもある。だが、天心は当面のターゲットではないことを明かした。 「(堤は)いっぱいベルトが欲しいと(会見で)言っていた。いっぱいベルトを獲ればいいじゃないですか。今、オレ?ちょっと違くない?いつか、僕もチャンプになれば、挑戦する形になればやるでしょう。今はまだいい」
【関連記事】
- 「井上尚弥の何が凄いって…距離感と迷いのなさ」井岡一翔が大晦日決戦6日前のクリスマス夜に異例の1時間インスタライブで5階級制覇など“禁断の話題”について語り尽くす
- 「井上尚弥の歴史を終わらせる」はずの五輪連覇ラミレスがWBO世界戦でまさかの6R棄権負けで「自分が終わる」も「肘打ちの反則で目が見えなくなった」と猛抗議
- 那須川天心にUFCから仰天オファーも「二股はできない」…WBOチャンプ武居由樹の対戦要求「ふられた」発言には「告ってない。恋愛慣れていないのは?」と逆襲
- IBFバンタム王者の西田凌佑に7回KO負けしたアヌチャイに聞く「西田が統一戦を希望する中谷潤人と戦ったらどっちが勝つ?」
- 「負けてから強くなるのが辰吉やん」なぜ辰吉ジュニアは初のタイトル戦で衝撃の2回失神TKO負けを喫したのか…カリスマの父は再起を促すメッセージを送る