第2次トランプ政権で加速する「米国の宇宙開発」とスペースXの取り組み
多くの米国の宇宙関連の企業が新たな活路を見出す可能性
スペースXは、すでにアルテミス計画に関与しており、宇宙飛行士を月面に着陸させる月着陸船として機能するスターシップのバージョンを開発中だ。しかし、SLSをスターシップに置き換える別の政府契約が取れれば、同社にとって大きな利益となる。 ただし、ボーイングが主要契約者であるSLSは、全米50州の雇用を支えており、その廃止は議会からの反発に直面する可能性が高い。より現実的な案は、最初の3回のアルテミスのミッションを終えた後、商業開発ロケットへの移行プロセスを開始することだと関係筋は述べている。この場合は、ジェフ・ベゾスが所有する宇宙企業ブルーオリジンがスペースXの競合となる可能性がある。 トランプ政権下でマスクとスペースXが恩恵を受けるもう1つの方法は、現状で民主党が多数派を占める連邦通信委員会(FCC)の支配権を共和党が取り戻すことだ。スペースXは現在、スターリンクが手がける通信衛星の電波使用量の増強など、多くの申請をFCCにペンディングにされているとクイルティは指摘した。 さらに、第2次トランプ政権は、中国に対抗するために、宇宙分野の民営化にさらに傾倒する可能性が高いと、Voyager Space(ボイジャー・スペース)で商業宇宙ステーションの建設を進めるジェフリー・マンバーは述べている。「NASAや国防総省でもその動きが見られるだろう」と彼は述べている。 これにより、米国の多くの宇宙関連企業が新たな活路を見出す可能性がある。近年は、Maxar(マクサー)やPlanet Labs(プラネット・ラボ)などの商業衛星からの鮮明な画像が、ロシアによるウクライナ侵攻の状況把握などにも用いられており、この分野は大きな進歩を遂げている。 ただし、ここでの課題の1つは、米国の安全保障機関が通信や偵察活動において、「政府が所有するシステムへの依存を減らすことを躊躇している」ことにあるとアナリストは述べている。国防総省の科学委員会は5月の報告書で「政府は、商業サービスの長期的な信頼性、特に緊急時の対応に懐疑的だ」と主張した。 その一例には、2022年にマスクが、ロシアの占領下にあるクリミアで、スターリンクを使用したいと申し出たウクライナ側の要請を拒否したことが挙げられる。マスクはロシアからの核を用いた報復を恐れたと語っていた。 一方、トランプ政権下での不確実性の高まりが、米国以外の国がもつ独自の宇宙計画を加速させる可能性があると、海外の宇宙機関の動向に詳しいマンバーは述べている。「すべての国が、宇宙へのアクセスを米国に依存することに懸念を示している」と彼は指摘した。
Jeremy Bogaisky