豪州の脅威バザナを自ら視察…“勝負師・井端”の妥協許さぬ厳しさ「まさか」を削る努力が順当な快勝の裏側に
◇渋谷真コラム・龍の背に乗って・侍ジャパン編 ◇13日 「ラグザス presents 第3回 プレミア12」 1次リーグ 日本9―3オーストラリア(バンテリンドームナゴヤ) 大会連覇に向けて、井端監督が重要視していた初戦を取った。世界野球ソフトボール連盟(WBSC)のランキングで出場国は決まるが、独走状態の1位・日本に対し、オーストラリアは11位。確かに格下だが、侮ってはいなかった。 昨春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では韓国に打ち勝ち、8強進出。日本は7―1と圧倒したが、超特大弾を放った大谷やヌートバー、先発した山本らメジャー組が不参加だが、オーストラリアは24人が今回も来日している。この日の先発メンバーも8人は同じ。つまり国際大会の経験値やチームのまとまり、何よりもパワーは十分にある。 先発野手のうち、唯一の新顔が「1番・二塁」のトラビス・バザナだった。今季MLBドラフトの全体1位でガーディアンズが指名。同国史上初の快挙だった。大リーグ公式サイトは、今大会の注目選手8人を特集する記事で3番目にバザナを紹介。「オレゴン(州立大出身)のスター選手。スイングが速く、ハンドリングもスムーズでスピードもある。真のオールラウンドプレーヤー」と絶賛している。 そのトッププロスペクトの脅威がどのレベルなのか、井端監督は自分の目で確かめた。宮崎合宿を打ち上げた6日、名古屋に飛んだチームと離れ、羽田に向かった。東京都府中市で7日に行われたオーストラリア代表の練習試合を視察するためだった。 「もちろん潜在能力はあります。ただ、今はまだ粗さもある」。スタッフに任せず自ら足を運んだ理由は、国際大会の怖さを知り尽くしているからだ。 「(ペナントレースのように)143試合あれば、勝てるでしょうね。でも一発勝負ではわからない。10回に1回(の負け)がその日に来るかもしれないんです」 僕はその10回に1回を目の前で見た。2004年のアテネ五輪。松坂大輔が投げながら、オーストラリアに0―1で敗れ、金メダルが消えた。勝負に絶対はない。だが「まさか」を削る努力ならできる。この秋は韓国にも飛んだ。台湾にも行った。誰もが当たり前だと思う快勝の裏には、勝負師・井端の妥協を許さぬ厳しさがある。
中日スポーツ