「ナミビアの砂漠」「Cloud クラウド」の音楽を手掛けた渡邊琢磨が語る「映画音楽の魅力」
――自己評価が厳しいですね(笑)。個人的には合っていたと思いますし、新鮮さもありました。
渡邊:どんな音楽であれ映像に当ててみるとそれが最善に見えたり、何かしらの演出意図に思えてしまうのが、映画音楽の難しいところです。なのでつくった音楽に確信を持ちたいという気持ちに騙されないよう用心しています。
黒沢清監督との仕事
――その音楽が合っているかどうかは、最終的には監督の判断に委ねられるわけですね。では黒沢清監督の作品について伺いたいのですが、初めて黒沢作品を手掛けたのは「Chime」(24年)ですか?
渡邊:そうです。プロデューサーから送られてきた企画書をもとに、自分のオリジナル曲をいくつか選んで黒沢さんにお送りしたところ、そのうちの1曲があるシーンの音のイメージに近いということでオファーを頂きました。
――ということは、作曲に入る前にサントラの方向性はつかめていたわけですね。
渡邊:大まかにはそうですね。「Chime」で音楽を当てたシーンはラストとエンドロールの2カ所だけで、音楽の入りも演出も明快だったので作業は簡潔でした。
――そして、「Chime」の縁で「Cloud クラウド」につながったわけですね。黒沢監督は音楽の使い方には一貫したところがありますが、音楽に関してイメージを持たれている方なのでしょうか。
渡邊:僕が携わった映画に関しては、古典的な管弦楽を基調とした音色や響きが黒沢さんの念頭にあったと思います。それも漠然としたイメージではなく「木管楽器を使うのはどうでしょう」というように、音色や質感についても具体的なお話しがありました。併せてバーナード・ハーマンの音楽や、ジョン・ウィリアムズが音楽を手掛けた「宇宙戦争」(05年)のサウンドトラックなども参照されていたので、音楽の方向性はすぐに定まりました。
――黒沢監督のサントラはオーケストラ・サウンドを使った伝統的な映画音楽をもとにしたものが多いですが、「Cloud クラウド」もそうでしたね。