「ナミビアの砂漠」「Cloud クラウド」の音楽を手掛けた渡邊琢磨が語る「映画音楽の魅力」
近年、映画音楽の作曲家以外に、さまざまなミュージシャンがサントラを手掛けるようになった。渡邊琢磨もその一人。かつてキップ・ハンラハン、デヴィッド・シルヴィアンなど伝説的なミュージシャンとコラボレートし、映画音楽を手掛けるようになったのは2000年代に入ってから。近年は「いとみち」(横浜聡子監督、21年)、「はい、泳げません」(渡辺健作監督、22年)、「鯨の骨」(大江崇允監督、23年)などさまざまなタイプの作品のサントラを手掛けてきた。そんな中、今年は「Chime」「ナミビアの砂漠」「Cloud クラウド」という話題作3本に携わり、まったく違ったアプローチでユニークなサントラをつくり上げた。映画界で注目を集めているに、「ナミビアの砂漠」「Cloud クラウド」を中心に映画音楽について話を聞いた。 【画像】「ナミビアの砂漠」「Cloud クラウド」の音楽を手掛けた渡邊琢磨が語る「映画音楽の魅力」
「ナミビアの砂漠」の電子音
――まず、「ナミビアの砂漠」について伺いたいのですが、どういう経緯で参加することになったのでしょうか。
渡邊琢磨(以下、渡邊):山中さんから映画のプロデューサーを介して連絡がありました。僕が音楽を担当したほかの映画作品を山中さんがご覧になったことがきっかけでお声掛けいただきました。オファーを受けた段階で映画の編集はセミオールくらいまで固まっていて、音楽だけが要不要含めて保留状態でした。そのあとオフラインを拝見したのですが、音楽は最小限もしくはなくてもよいのではと思い、その感想を山中さんと制作部にお伝えしたのですが、監督も当初音楽なしの案も考えていたそうで、音楽を当てるとしても4シーンくらいではないかとのことでした。
――映画に対しては、どんな感想を持たれました?
渡邊:主人公のカナ(河合優実)が、家の近所を無目的に歩くシーンが大変印象に残りました。その不安げで寄るべない散歩を見ているうちに、各シーンの出来事が何かしらの事実に帰結するのではなく、主人公に収れんしていくような映画ではないかと思い始めました。劇伴も主題を変奏する演出ではなく、主人公の空虚さや躍動を音にするのはどうかなと。