フリーアナウンサー・神田愛花『 グランピングとの戦いに終止符だ!!』
ようやく本格的な春に突入。梅雨入りまでは春レジャーの満喫タイムだ。しかし、幽霊よりも虫が大嫌いな私にとっては真逆。春の訪れは虫の訪れなのだ。虫嫌いなら自然界と距離を置けばいいのだが、自然の中に身を置くのは大好き。だから冬のグランピングは最高のレジャーで、この秋冬だけでも3回行った。 【画像】個性あふれる神田愛花さんの直筆イラスト(1回~49回)はこちら 初めてのグランピングは3年前。メンバーは学生時代の仲良し4人組だ。「いい雰囲気!」と思った施設を予約した。屋外ウッドデッキでのBBQにテンションが上がる。だが日が暮れてBBQを始めた時、予想外のことが起きた。照明は食卓の上に一つだけぶら下がっているオレンジ色の灯りのみ。暗過ぎて、お肉が焼けたかどうかまったく見えないのだ。その上、寒過ぎる。気温は5℃。楽しみにしていた冷えた缶ビールも、手袋なしでは持っていられない。おまけにお手洗いは離れた場所にあり、そこまでの道も真っ暗で怖い。お手洗いの回数を最小限にするためビールを諦めた挙げ句、「寒い! テントの中に入りたい!」と全員お手上げ。満喫できずに朝を迎えた。 翌年の冬、悔しさから同じメンバーで2回目のグランピングにチャレンジ。前回の反省を活かし、冷暖房・お手洗い完備のBBQ部屋付きグランピング施設を予約した。大きな窓から自然を眺めながら食事ができる、完璧な施設だった。前菜から順に、しっかり火が通ったものを食べられる嬉しさと、ビールをたらふく飲める嬉しさで、会話が弾む。だが「いよいよステーキを焼きまーす!」となった時、気がついた。全員すでにお腹いっぱいだったのだ。メインのお肉が入らない。「またグランピングに負けた!」。40過ぎた大人が4人も集まってこの失態。さらに悔しさが増した。 そして昨年秋。″三度目の正直″で新たなグランピング施設を予約した。行きの電車では「今度こそノーミスで終え、グランピングを卒業し、次のステップに進むぞ!」と誓い合った。その言葉通り、快適な環境で最初にステーキを食べきり、その後は前菜をおつまみにしてビールを飲み続けた。そう、私たちはついに、グランピングに翻弄(ほんろう)される日々を卒業したのだ。「グランピングに勝った!」と何度も乾杯し、その夜は気持ちよく眠った。 翌朝、コーヒーを飲みながらゆったりと朝食を食べることにした。どのグランピング施設にも、なぜかコーヒー豆と手挽きのコーヒーミルが置いてある。「自分で挽くなんて優雅だねぇ」と言いながら挽き始めた。だがここで新たな問題に直面する。どんなに回しても豆がなかなか細かくならないのだ。一体、何十分かかるのやら。手首も疲れてきて痛い。ようやく全員分のコーヒーが入ったのは、チェックアウトの30分前。結局最後はバタバタし、帰りの電車では、「もうグランピングには勝てない」「三度目の正直なんて嘘だ……」と白旗を上げた。 ◆決着はモーニングコーヒーで そして今年3月。(勝利はすぐそこなのに、次の晩秋まで先延ばしでいいのか!?)と自問自答した。コーヒー問題さえクリアできれば、私の中での対グランピング戦は勝利で終えられるのだ。それを先延ばしにする意味は? (……ない!!)。そして、(今シーズンのうちに決着をつけなきゃ!)と奮い立った。 夫を誘い、コーヒーで敗北した施設を再訪。私にとっては通算5回目のグランピングだ。到着から翌朝起きるまで、前回と同じ流れを繰り返した。そしていよいよ朝食の時間。私から「コーヒーでも飲む?」と夫に聞くと、「いいね!」と返答が。さぁ、その時が来た。自宅から持ってきたドリップコーヒーを鞄から取り出し、お湯を沸かす。棚の上には、前回同様、コーヒー豆とコーヒーミルが置いてある。思わず彼らを睨みつけた。そして彼らに対し、「私の勝ちだ」と声が漏れた。心から出た、グランピングに対しての勝利宣言だった。カップにドリップコーヒーをセット。お湯を注ぎ、コーヒーが完成した。その間たったの数分。そして絶好調な手首でカップを持ち上げ、優雅に飲んだ。それはそれは美味しかった。(やっと……グランピングに勝った。やっと、私流の楽しみ方を確立できた!)。窓の外の木々が輝いて見えた。 これでようやく前に進むことができる。次なる、自然界での″虫なしレジャー″は、何があるかなぁ? 探そうっと♫ かんだ・あいか/1980年、神奈川県出身。学習院大学理学部数学科を卒業後、2003年、NHKにアナウンサーとして入局。2012年にNHKを退職し、フリーアナウンサーに。以降、バラエティ番組を中心に活躍し、現在、昼の帯番組『ぽかぽか』(フジテレビ系)にメインMCとしてレギュラー出演中 『FRIDAY』2024年5月10・17日号より イラスト・文:神田愛花
FRIDAYデジタル