逆転サヨナラ打を浴びたバルドナード（中央）はベンチに引き揚げる（カメラ・相川　和寛）

◆日本生命セ・パ交流戦　楽天７×―６巨人（１１日・楽天モバイル） 　勝利まであと１人、あと１球から全ての状況が暗転した。１点リードの９回２死満塁、バルドナードがカウント２―２から小郷に１５０キロ直球を捉えられた。仙台の夜空に上がった白球は大歓声の中、前進守備の外野手の頭上を越えて右中間を破った。２点適時二塁打で悪夢の逆転サヨナラ負け。一塁ベンチ内から歓喜に沸く楽天ナインを悔しそうに見つめた阿部監督は「うちは抑え（守護神）がいっているんだから。やるかやられるか」と言葉を絞り出した。 　６―２の８回、２番手の西舘が浅村に２ランを浴びた。さらに１死から四球を出し、高梨に継投したが２四球で２死満塁。ここは何とか踏ん張るも、９回に登板のバルドナードが内野安打と２四球で１死満塁として押し出し四球で１点差。小深田を空振り三振に抑えたが最後に力尽きた。８、９回で計５失点して４点差逆転負け。特に９回は与四球が痛恨の失点につながり「ですね、それだけだ」と阿部監督。際どいコースがボール判定になる中、勝負どころで「困ったらど真ん中」を体現できなかった。 　７日からの東京Ｄオリックス３連戦は東、斎藤、佐藤と初対戦の相手先発を攻略できず３連敗。楽天、日本ハムとのビジター６連戦に向け、阿部監督は「目標は五分」と新たな気持ちで臨んだ。ポンセも巨人にとって“初物”だったが、４回までに岸田、泉口、丸と今季チーム初の１試合３本塁打で６得点と攻略に成功。それでも打線は５回以降ノーヒットで勢いが遮断された。 　４番の岡本和は得点圏の好機で３度凡退して４打数無安打、坂本も無安打に終わった。４、５番が無安打でも周りがカバーして勝利をつかみかけたが、あと一歩届かなかった。試合の流れを完全につかむためには、取れる時に点を取る攻撃、相手に勢いを与えないような粘り強い打席の積み重ね、主軸の一打が重要であると痛感する試合展開だった。 　試合後、バルドナードは「今日はすみません」とだけ言い残してバスに乗り込んだ。開幕から奮闘してきた投手陣は責められない。暑さも厳しくなる今後は、打撃陣のさらなるカバーが求められるだろう。「今日はやられたけど、とにかく明日切り替えていきます」と阿部監督。１２、１３日の楽天戦で１敗すると交流戦の優勝は消滅する。悲観している暇はない。（片岡　優帆） 　【記録メモ】巨人が交流戦で９回に２点差を一挙逆転されてのサヨナラ負けは、０６年５月２０日楽天戦、１０年５月２１日楽天戦、１５年６月１４日ロッテ戦に次いで４度目。９回一挙逆転サヨナラ負けの最多得点差になるが、３度は楽天戦。特に１０年は４点差を８回２点、９回３点を奪われサヨナラ負けしており、この試合で再現されてしまった。 　◆高橋由伸Ｐｏｉｎｔ　投手陣は明らかに疲れてきた。まあ、当然だろう。開幕から常に接戦で登板し、１点もやれない緊迫感の中で抑えてきたのだから。３点以上のリードとはわけが違い、投げる球種、コースも変わってくる。いつかはこんな時が来ると、阿部監督も感じていたと思う。今こそ、攻撃陣が打ってピッチャーを楽にしてあげないと、チームのバランスは取れない。いつでも点を取ってくれるという安心感を与えること。今年、こんな逆転負けはないのだから、奮起のきっかけにしてもらいたい。岡本和に吉川、坂本、丸が中心になり、引っ張る姿が見たい。