公務員辞めた57歳、諦められなかった料理人へ 単身北海道で夢を追う
【北海道帯広市】地方公務員を早期退職し秋田県から来勝した長崎淳さん(57)は、幼い頃に描いた料理人の夢を実現しようと、帯広調理師専門学校(遠藤珠子校長)で学んでいる。十勝の環境を気に入り単身での挑戦。長崎さんは「まずは免許取得に注力しないといけないが、将来は十勝の食材も生かしたお店が出せれば」と意気込んでいる。 長崎さんは1967年、秋田県大館市生まれ。小学生の頃に見たテレビ番組「世界の料理ショー」を見て料理に強い関心を持つようになった。心に秘めたまま、家庭の事情や親の考えで高校卒業後は民間企業に就職。その後、安定を考え公務員試験を受けて同市の市役所に25歳の時に転職した。 「同じ仕事を続けるよりは、自分がやりたい仕事に就きたい」。職場の定年退職の年齢が65歳に延長されたことで、夢への思いがよみがえった。短期で免許を取得できる1年制の専門学校を探し、2022年1月、同校のオープンキャンパスに訪れた。「田舎過ぎず都会過ぎず、ちょうどいい都市で十勝晴れの空に一目ぼれした」。80代の両親が健在なうちにという考えもあり、仕事の区切りが付いた23年末に退職した。 24年4月の入学後は知り合いがいない地で、ほぼ毎日の実習に戸惑いもあった。けれども「一緒に学ぶ10代の若者や社会人、学校の人にも良くしてもらった」。 午後4時に下校してからは実習ノートをまとめたり、テスト勉強をしたりと、1年制ならではの密度の濃い一日。休日は包丁研ぎで3時間ほど費やす。今春の卒業に向け「仕事でもっと忙しいことを経験しているので大歓迎」と充実した日々を送っている。 将来の目標は1、2点のメニューに特化した専門店を出すこと。料理内容や出店場所はこれからだが「秋田市のほか帯広市も視野に入れたい。十勝のユリ根やジャガイモ、ニンジンなどの根菜類は抜群においしいので生かしていければ」と抱負を口にする。 オープンキャンパスの時から気に掛けていた同校の総務・広報担当の村上政美さんは「異なる職種の人が十勝に目を向けてくれてうれしい。一人でも多く、十勝の食を守ってくれる人が増えれば」と期待を寄せている。(高井翔太)