新たな脅威「ゲリラ豪雨」が及ぼす健康への影響は?
【役に立つオモシロ医学論文】 世界保健機関(WHO)によれば、暴風雨や洪水などの気象災害は、1970年から2019年の50年間で、約5倍に増加していると見積もられています。異常気象の多くは、気温や気象パターンの長期的な変化に伴う気候変動によって生じていると考えられており、その原因のひとつに地球の温暖化を挙げることができます。 台風の接近で死亡リスクがアップする 米国医学誌で解析報告 適度な降雨は、夏場の暑さを緩和し、大気中に浮遊する汚染物質を洗い流す作用が期待できます。一方、激しい降雨が長引くと、気象災害だけでなく感染症の蔓延など人の健康状態にも悪影響を及ぼす可能性があります。そんな中、降雨と死亡リスクの関連性を検討した研究論文が、英国医師会誌の電子版に24年10月9日付で掲載されました。 この研究では、34の国または地域における、総死亡1億995万4744件、心臓病による死亡3116万4161件、呼吸器(肺など呼吸に関連する臓器)の病気による死亡1181万7278件が分析対象となりました。また、気象衛星の観測データや地上における気象データから、過去の気象状況と降水量が見積もられました。これらのデータを用いて、激しい降雨と死亡リスクの関連性が統計的に解析されています。 その結果、5年に1度の頻度で発生するような激しい降雨が発生した場合、総死亡のリスクが8%、心臓病による死亡リスクが5%、呼吸器の病気による死亡リスクが29%、統計学的にも有意に増加しました。 一方、2年に1度の頻度で発生するような激しい降雨では、呼吸器の病気による死亡リスクのみが上昇し、総死亡や心臓病による死亡は増加しませんでした。 論文著者らは、「気象や公衆衛生の専門家、都市計画にかかわる関係者らが協力して、幅広い健康対策の立案が必要である」と結論しています。 (青島周一/勤務薬剤師/「薬剤師のジャーナルクラブ」共同主宰)