女性の低賃金・貧困招く第3号被保険者制度 生き方の選択に中立な制度へ
「不公平の上塗り」制度
ちなみに、現在、第3号被保険者の国民年金保険料を負担しているのは、独身者を含めた厚生年金の被保険者たちだ。誤解されがちだが、第3号の配偶者が代わりに払っているのではない。 岸田文雄政権は昨年10月、「年収の壁・支援強化パッケージ」という第3号被保険者の支援策を打ち出した。パートやアルバイトの人が、社会保険への加入義務が発生する「年収の壁」を気にせず働けるよう雇用主に助成金を出すもので、言ってみれば第3号被保険者の保険料を国が肩代わりする仕組みだ。いずれにしても第3号被保険者だけ優遇されていると言われても仕方のないシステムだ。大矢さんは「独身世帯も共働き世帯もあるのに、第3号被保険者だけを救済するもの。第3号被保険者制度そのものが不公平なのに、不公平の上塗りをするようなものだ」と批判する。 政治が制度改正に及び腰な一方、連合の芳野友子会長は昨年6月、廃止の方向性を視野にこう述べている。「女性が親の介護などで仕事を辞めざるを得ないとき、結婚している人は2号から3号に移行できるが、結婚していなければ第1号になる。ライフスタイルによって女性の位置づけが変わってしまうというのは不公平な制度ではないか。どういう生き方を選択しても不利にならないような、中立的な制度にしていかなければならない」。 大矢さんは「第3号被保険者制度を温存したままでは、どのような手を打っても、またどこかにひずみが生じる。この制度はこれからの世代に必要なのか。働く女性、単身女性の声を政治に届けなければいけない」と語った。
三浦美和子・ジャーナリスト