【ボートレース】5000連対を達成した西島義則を直撃「とにかく与えられた仕事を全うする」
西島義則(63=広島)が8月1日に史上5人目となる通算3000勝、9月21日には史上7人目となる2連対5000回という大記録に到達した。デビューから43年。「3000」「5000」という数字を積み重ねた原動力は何か――。実直に戦い続けるベテランを直撃した。 ――史上7人目となる5000連対を達成 西島 若い頃だったらピンロクスタイル(1着か6着)で1等を狙えばいいと…。その代わりに連から飛ぶことも多かった。僕らの若い頃は2連複、2連単だったので、とにかくエンジンが出てなくても連勝式に絡んでお客さんに貢献したいというのがすごく強かった。そういう観点からいけば3000勝よりもお客さんに貢献できるという方がすごく価値があると思っていたので、そっちの方がうれしかった。 ――63歳。原動力は 西島 やっぱり、やるからには負けたくないというのが一番ですね。親子ほど年が離れた選手とやるわけですから。そこで対等に戦えるスポーツって他にないでしょ? 身体的にも何にしても全てにおいて絶対に勝てることはないですからそのために気力だけでもね。(衰えは)自分が一番分かっています。やっぱり若い時と比べると落ちているというのは痛感している。だけど、そこを気力と経験でカバーしながらやっている。ボートレースという競技は男も女も同じ土俵で戦えるわけじゃないですか。こんなスポーツは他にない。そこは感謝しています。これだけプロとして43年もやってこれたというか、やらせてもらっている。そういう場を与えてくれているボートレースには感謝しています。 ――心境の変化は 西島 若い頃はとにかく勝つことしか考えていなかった。朝から晩まで仕事のことを考えているのが多かった。走れるのが当たり前と考えていましたからね。普通にしていれば斡旋は入ってくるものだし、稼げば稼ぐだけ記念やSGに走るのが当たり前だと思っていた。ただ、11年前に大怪我で入院して、もう辞めようかなと思ったことが何度もあった。そこで復帰に向けて妻や子供が背中を押してくれた。そういうこともあって走れるのが当たり前じゃないんだなと…。昔は転覆したりした時に体も痛いし、エンジンも壊れたから帰ろうと…。でも、今は絶対に帰らない。骨折したりドクターストップがかからない限り帰らないと決めている。それは走れるのが当たり前じゃないからね。帰った時はいいけど、次の日に目が覚めた時に悔いしか残らない。自分に負けたのがすごく悔しい。そういう思いをするくらいなら最後までやってダメなら納得する。投げ出さずにやったというね。好きな言葉で「無事是名馬」というのがあるんですけど、いくらいい選手でも途中でリタイアしたらダメ。最後まで走り抜くのが名馬というのが意味なんだけど、そういうのを考えながらやっています。とにかく与えられた仕事を全うすることを考えています。 ――ベテランになると年齢による衰えとの戦いもある 西島 全ての面で大なり小なり、老いはきますよ。ただ、そこの戦いなんですよね。気力も技術もあって何でもやれると思うけど、肉体的にダメになってくる時がくるんです。それが今年かもしれないし、来年や2年後かもしれない。それは自分でわかっています。だからやれる時までは全力でやろうと。モチベーションでいえばそこかもしれないですね。 ――イン屋になったきっかけは 西島 はっきり覚えてないけど、記念に行きだしてからかな。持ちペラになっていろんなペラを試して、そこでピット離れがいいペラをつくり、そこからこだわってインを取るようになったと思います。新鋭王座が終わったくらいですかね。 ――周囲からの反発は 西島 それはありましたよ。でもアマチュアやクラブ活動じゃない。アマチュアじゃない、プロなんだというのを一番に言いたい。人の目を気にして仕事するなら辞めてしまえと。お客さんはお金を賭けてくれている。だけど、この選手とこの選手は仲がいいからこうなるだろとか思ってないでしょ? そこに私情を挟むのはいけないと思う。やっぱり違うんじゃないかなと思う。僕の同期で大嶋(一也)さんがいる。今でも飲んだりするんですけど、現役中は全く付き合いがなかったんですよ。なぜかというと記念レースで毎節一緒じゃないですか。インの取り合いをした時に仲が良過ぎて私情を挟むこともあるし、そういうのがあった。若い頃は一緒にご飯を食べたりしていたんですよ。ただ、2人が稼ぎだして同じ土俵で仕事するとなった時にそれではダメだと。そういう風に付き合わないようにしていましたね。 ――他艇から前づけに来られるのは 西島 それは何とも思わないです。当たり前だと思いますからね、勝ちたいというのが。ただ、6号艇になった時に地元だからとか、優勝戦だから前づけに行くという選手がいるんだけど、あれがすごく頭にくる。じゃあ普段のレースはいいのか、地元じゃなかったら全能力を出さなくていいのかと。そういう気持ちがあるなら全部のレースをそういう気持ちで走れよと思う。僕らはそうだから、それがすごく嫌なんですよ。考え方が違うんじゃないのかと。それでプロなのかなと思う。普段は全力を出してないということだしね。 ――引退について 西島 十分に気力や体力はあると思うけど、老化には勝てないからね。イチローでもそうじゃないですか。あれだけの技術がありながら引退を覚悟しないといけない時がくるのは、やっぱり老化。それはプロである限りは必ず訪れるので。 ――今後の目標は 西島 通過点として3000勝や5000連対というのがあったのでそこは目指してきた。あとは日々更新していく。(記録は)通過点であるべき。ただ、今から4000勝を目指すというのは無理な話だし、そういう目標はないですね。 ――24場制覇、100Vも迫っている 西島 24場制覇は成績が悪いわけではないんですよ。びわこでも(勝率)7点くらいあるんです。たまたま巡り合わせが悪くて優勝できていないだけであって巡り合わせさえ良ければ勝てるかなと思っています。100Vにしてもそうだけど、勝てる時は勝てると思いますよ。別にそこを目指してやっているわけではない。逆に毎節優勝したい気持ちでは行ってますからね。 ――G1、SGへの思い 西島 それは走りたいと思っていますよ。だけど去年(勝率)7・60くらい取った期があったけど、その時でも記念に一回も入らなかった。SGに出るにも記念を走れないからSGにも出にくい。そういう状況になってくるんですよ。やっぱり世代交代の波もあるし、それは時代の流れで仕方ないのかなと受け止めている。そのためにはやっぱり出れるところから行かないとしょうがないのかなと思いますけどね。
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